毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 24話「試作品」

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 紫の一言で、早苗たちを囲む妖怪達は一気に動き出した。もちろん、フランドールも然り。それを見た早苗と妖夢は身構え、いつでも反応出来るような体勢をとった。
「紫様!何故こんなことをするのですか!早苗が何をしたというのですか!?話してください!紫様!!きっと何かの勘違いですよ!!」
 妖夢が叫ぶが、紫は微動だにすることはなかった。むしろ、早苗の味方をするならば妖夢もろとも潰すつもりのようだった。
「紫様……!?」
妖夢さん!ここはやるしかありません!」
 早苗は奇跡の詠唱を唱え始めた。妖夢は止むを得ない、といった様子で剣を構え始めた。
 そういえば、周囲にいる妖怪たちは何なのだろうか。見た目こそはどこにでもいそうなものであるものの、明らかに様子がおかしいのは確かだ。それに、妖怪がそう易々と協力を承諾するとも思えない。ということは、紫に操られているという線が一番強いであろう。あくまで憶測に過ぎないのだが紫ならばそんなことも可能であろう――それに、フランドールの例もある。
 一通り詠唱を終わると、早苗と妖夢の身体を暖かい緑色の光が包んだ。これを使えば致命傷はそう簡単にはならない。
「……フランドールさんは攻撃しないで下さい。私が説得……いえ、元に戻してみますから」
 妖夢は静かに頷き、剣を上に立てて自分の胸の前まで持ってきた後、ゆっくりと眼を閉じた。精神統一しているようだ。刹那の時間経過の後、妖夢は大きく眼を見開いた。
「早苗ッ!大きく跳んで!!」
 その叫び声に言われるがまま早苗は大きく跳躍した。下を見ると、妖夢が囲む妖怪達に向かって回転斬りをしていた。その斬撃からは弾幕が放たれ、妖怪達を一掃する様が見て取れた。だが、それでもまだ妖怪達は残っているようだった。妖夢が心配だが、フランドールのほうが優先だ。早苗は跳躍した体勢のまま空を飛び、フランドールの元へ近づこうとした。
 だが、それは叶わなかった。ほんの数ミリの距離で、紫がフランドールごとスキマによって転移した。再び中距離になったところで、早苗は大きく叫んだ。
「フランドールさん!私です!早苗です!私がわからないのですか!?」
 必死に呼びかけるが、フランドールは虚ろで焦点の合っていない瞳のまま、早苗のいる方向を見ていた。だが、それは早苗を見ている訳ではなかった。
 フランドールにとって早苗は大切な存在ではない。ついこないだ、ちょっと見たことある程度の存在だ。でも、それでもそれを思い出して連鎖的に全てを思い出していけばきっと……。
「あなたには大切な人たちがいるでしょう!!紅魔館にいる人たち――美鈴さんにパチュリーさんに咲夜さん――そして、レミリアさんが!!」
 正直、失言だと思った。何故ならレミリア咲夜は既にいない。だから正気を取り戻した時に絶望するはずだ、と思ったからだ。しかし、こんな状態になってまで生きることをフランドールは望まないと思う。フランドールは恐らく、レミリア咲夜と一緒に逝くことを望むはずだ。それならば、いっそのことこの手で――。
 その思考は、突如のフランドールの苦しみ声により遮られた。きっと、私の声が届いたんだ、と早苗は思った。このまま、正気を取り戻してくれるように頑張らなくては……。そう考えた瞬間、紫が舌打ちをするのが聞こえた。
「まだ調節が甘いようね……この試作品は」
 ――試作品?
 その言葉を聞いた瞬間、早苗は身体がぐらつくのが見てわかった。
 試作品……?試作品だと……?この人は何も感じていないのか……?自分が何をやっているのか本当に分かっているのか?その試作品がなんだか分かっているのか?一つの命なのだぞ?増して、一度は尽きた儚い命なのだぞ?それを……それを物扱いするなどと……!!
 早苗は片手に力が込められていくのを感じ、さっきよりも強い憤慨を覚えた。
八雲紫……!!あなただけは……あなただけは!!!」
 今怒っているのは、フランドールのこと――もちろん、それも怒りを覚えているのだが――ではなく、目の前の紫の行動がただひたすらに許せなかったからだ。この人だけはここで撃退しなくてはならない……!
「あああぁぁぁ――――――――――――ッ!!!」
 早苗は即効で出せる弾幕を精一杯に放ち、大きく羽ばたいて紫との距離を詰めて蹴りを入れようとした。弾幕で辺りが煙に包まれる。早苗は紫がいた位置に強く蹴りを入れようとしたが、そこには紫――もちろん、フランドールも――の姿は無かった。何も考えずに突っ込んだのだ。当たるはずもなかった。
「試作品がこんな状態じゃ……まだ駄目ね。――命拾いしたわね、良かったじゃない」
 いつの間に背後に回っていた紫は、そんなことを呟いてからフランドールとともに静かに消えていった。逃がすまいと手を伸ばしたが、遅かった。すぐに追いかけようとしたが、当てがないのでどうしようもない。それが分かると、早苗は急に疲れが身体中に回ってくるのが感じ取れた。
 休んでいる暇はない――妖夢のことが心配だ。行ってみよう。
 早苗はふらふらと空を飛びながら、元の場所へと戻っていった。
 ……紫は――試作品がこんな状態じゃ駄目――と言っていた。何故わざわざフランドールを使おうとしているのだろう?紫は大妖怪、賢者だ。早苗くらいの存在を倒すことなど容易いだろう――もちろん、やられるわけにはいかないのだが。何かあるのだろうか――?
 考えても思考がまとまることはなかった。







To be continued…

遠野紅楼夢参加してきました。(今更)

そういえば更新するの忘れてたので今言います。

僕は岩手県にある遠野で開催された紅楼夢9.5、もとい同時開催された秘封オンリーイベント夢の世紀 魅知の旅に参加してきました。
初イベントですよ初イベント!こんな田舎に住んでいるのに高校生の段階で!!いやまあ、今年の夏コミ行きますけれども!

当日の出来事は漫画にまとめてありますので良かったらどうぞ↓

遠野紅楼夢レポート漫画(※初イベント参加) by くわない=クウ on pixiv

買ったものはこちらになります。
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幽閉サテライトさんの「纏」、そしてそのクリアファイル。今回は再録のCDでしたが絶版だったCDの曲が多かったので嬉しかったです。
クリアファイルはもちろん使ってます!KHのと入れ替えるか入れ替えまいか物凄く悩んだものです…w
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そして華鳥風月のポスター。ポスターとか初めてでしたね買うの。こういうのあまり興味がないものでw
でも、いざ買うとなんとなく良さが分かりますね~。綺麗な画だったらこれからも買ってみようかな。
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そして同人誌二冊になります。ざっくり言うと左のはイラスト本(といっていいものか経験が浅いので分からない)でしたが景色が綺麗で凄く感動しましたね。右のは秘封中心のシリアス小説でした。こちらもとても面白かったです。丁度秘封が熱い時期だったので嬉しかったですねw今回のイベントの開催もそうなのですがw
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そして最後にカタログになります。会場に入ってまずこれ(500円)を買って貰った時点でもう色々とこみ上げて来ました。心の中でめっちゃはしゃいでました。実際やったらドン引かれるほどに。

会場の雰囲気はやばかったですね~もう…なんていったらいいのか……わからない。なんというか……「これがイベントか!!!!」みたいな?
あの時を思い出すと今でも心が躍ります。あれからというものの視野が変わった気がしますね。
たとえば絵師さんのイベントのレポート漫画を読むと実感がよく沸くというか。馴染みやすいというか。兎に角見方は大きく変わったような気がしました。(?)

更に夏コミが楽しみになりました。
それではまたいつか。ばいばい。

【東方小説】東方刻奇跡 23話「禁忌」

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 此処は人間の里。早苗は自身の目的――信仰を集めて早苗自身にとって大切な神様である神奈子と諏訪子を復活させること――を達成するために、軽い芸や説明をしていた。
 早苗の額には、多少の汗が流れていた。陽を浴びて暑いわけでも炎に触れているわけでもなく、精神的な焦り――焦燥が早苗の脳内を支配していたからだ。今までのように気楽に出来るほど早苗は心は出来ていない。少しでも遅れてしまえば、もうどうにもならなくなってしまうかもしれない……。
 早く。早く。早く。そんな思考ばかりが早苗の脳内を張り巡らされていた。若干のイラつきを覚えながらも、早苗は周りの人間の様子がおかしいことに気がついた。いや、正確には全員ではない。純粋に信仰するために此処にいる人と、好奇心等の理由で近づいている人に分かれているようだった。
 理由は至極単純、早苗の境遇を知っていてわざわざ見に来る人間がいるのだろう――信仰もせずに。そんな人間達の奇怪な物やゴミを見るような眼と腫れ物のような扱い方に早苗は吐き気を覚えた。こんなところに今はいたくない。
「……はい!それでは今日はこれでお仕舞いにしようと思います。皆さん、守矢に信仰してくださいねー!」
 素性を知られないために早苗は精一杯元気な風を装い、早々にその場を立ち去った。立ち去る途中、群がる人間の中から舌打ちが聞こえた気がした。――もう来るな、とでもいいたいのか?何も知らないクセに――。
 早苗はこの時、一部の人間達の守矢の認識は大きく変化していることにまだ気付かなかった。




            第五章 漸うの桜




 信仰を催促していた場所から離れ、里を歩くことにした。
 これからどうしようか――人間の里にばかりいるのではなく、他の場所へ行って信仰をお願いしてみるのも悪くないが……。そこまで考えたところで、目の前に見覚えのある姿を見かけた。早苗は一旦考えを振り払ってから、小走りになってその後姿に声をかけた。
妖夢さん!」
 早苗が声をかけると、振り返ったのは予想通り魂魄妖夢だった。
「早苗!五年振りね……やっぱり、あの時から何も変わっていないのは本当だったのね……」
 妖夢は少しだけ哀れんだ瞳で早苗を見たが、すぐにそれを振り払うようにかぶりを振った。
「ううん、違う。元に戻れたのよね!おめでとう!」
 そして無邪気に笑った。その妖夢はというと、全体的には五年前と何も変わっていない。半人半霊だから歳を取るのが遅いのだろう。強いて違うところを上げるとすれば……髪型がボブカットではなくバラバラの長さに切り分けたショートヘアーになっている。少しだけ男性のような髪型にも思える。
幽々子さんは元気ですか?」
 そう早苗が言うと、妖夢は相変わらず、と言った風に困ったような表情をした。
「そうですか……変わってなくてよかったです」
「おかげで私は年中忙しいんだけどね」
 二人で笑いあった。一頻り笑いあった後、早苗はふと思い出した。八雲紫のことだ。何故紫は早苗を眼の敵にしているのかずっと謎だった。友人である幽々子なら何か知っている可能性がある。
妖夢さん……八雲紫について何か幽々子さんから聞いていませんか?」
 妖夢はきょとんとした様子でかぶりを振った。
「紫さまがどうかしたの?」
「いえ、ちょっと気になったことがあって……」
「それなら、直接幽々子さまに聞いたほうが早いわよ。丁度買いだしを終えたところだし、一緒に白玉楼に行きましょ」
 妖夢がそう言った。確かにその方が良い。何か聞ければ今後の対策になるだろうし、ついでに信仰してもらうよう頼んでみよう。――最悪の場合……幽々子も紫側ということも一応想定しておこう。
 早苗は、妖夢に連れられて人間の里を出た。





 しばらく歩いて、気付けば森の中にいた。
「もうすぐよ。ちょっと暗くなってきちゃったわね、良かったら白玉楼に泊まっていくといいわよ」
「いいのですか?ありがとうございます!」
 そんな会話をしていると、早苗達は違和感を感じた。
「……何かいますね」
「ええ……気をつけて。――早苗、上!!」
 妖夢が早苗に向かって叫んだ。それに反応した早苗は反射的に大きく後ろに下がっていた。その瞬間、早苗が立っていた場所には剣のようなものが突き刺さった。……危なかった。完全に注意散漫だった。妖夢の忠告が無ければどうなっていたことやら……。
「ちっ……外したようね」
 そしてどこからともなく声が聞こえた。早苗と妖夢は辺りを見回して、上空を見た瞬間驚愕した。
「――八雲、紫……!」
 早苗が無意識に呟いていた。紫は滞空したまま早苗を見下ろしていた。
「今度こそ消えてもらうわ……東風谷早苗
「いい加減にして下さいッ!!理由も無しに存在を消されるなどと……おかしいにも程がありますよ!!」
 早苗が紫を見上げながら喚くが、その言葉に紫は何も言わなかった。すると、唇の片方の端をニッとつり上げた。
「……出てきなさい」
 紫が一言呟くと、何やら背後から羽が生えたものが――
「――!!」
 ま、さか。そんな。どう……して……。












































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 早苗は、絶句した。
 フランドールが、機械と合体して――サイボーグと言ったほうが分かりやすいか――紫の隣で浮いていた。
「なん、で……フランドールさんは、あの時……」
 背後で息を呑む音が聞こえた。妖夢も紅魔館の事件は噂程度には聞いていたのだろう。
 そう。フランドールはあの時レミリアと一緒に消滅したはずなのだ。だが、こうして目の前に立ち塞がっている。――何故?早苗はここで、嫌な予感を感じた。……まさかッ!!
八雲紫!!あなたは……あなたはなんて残酷なことをッ……。あなたはやってはいけないこと――禁忌に触れてしまった!!」
 それに関して紫は冷たい眼のまま何も言わなかった。まるでこれは尊い犠牲、止むを得ないものだというように。
 早苗は、あの時の美鈴の言葉を思い出していた。――フランドールの遺品が無くなっていた――と。恐らく紫が身体ごと回収して、本来あそこで死ぬはずだったフランドールを改造して無理矢理蘇生させたのだろう。
「何も感じないのですか……あなたは!!増してフランドールさんは……大切な二人を亡くしているのに……こんなの……酷過ぎま――」
 パチン――――
 早苗の喚き声を遮るように、紫が指を鳴らした。その瞬間、早苗と妖夢を囲むように妖怪が現れた。
「さあ、行きなさい。東風谷早苗を消すのよ」










To be continued…

【東方小説】東方刻奇跡 22話「愛の想い」

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(続いて魔理沙視点)
 これから早苗の家――守矢神社の上を通り過ぎることになる。今はレース中であるから、『そこ』を確認するのは良くて数秒――この間に何か早苗に伝えられるようなことを見つけられればいいが。
 見えてきた。守矢神社だ。私は夕陽の眩しさに目を細めながら神社の様子をこの眼で確認した。五年後の守矢神社は――予想はしていたが、ひどく寂れた雰囲気になっていた。幻想郷全体で、この守矢神社には入らないことを確認しあっていた――そんなことを守る者なんて少数なのだが、関わりたくないという気持ちが強かったらしく何もされなかった――から、神社を見るのは久しぶりだった。
 私はすぐに箒のスピードを落とさずに神社を横目で見た。やはり最初見た時と同じく、寂れた様子だった――ただ一つの壁に出来た穴を見つけるまでは。
 見ると、他の所にも穴が多数。どう考えても壊されていた。どこぞの馬鹿が守矢神社を荒らしまわったのか――?そんな推測をする暇も無く、私とぬえは守矢神社を通り過ぎた。




 それ以降、私とぬえは様々な仕掛けに遭遇するも乗り越えた。ネタ切れなんです。ごめんなさい。




「ここからは一直線よ。ラストスパートってとこね!」
 ぬえがそう言うと、以前よりも飛ぶスピードを上げた。すぐに私も負けじと箒のスピードを上げた。この先は魔法の森――香霖堂。霖太郎や早苗は無事か?そして、香霖……待ってろよ。今すぐに助けてやるからな。
 私自身の覚悟が強まり、箒自体のスピードが増した気がした。ぬえと私はゴールめがけてひたすらに飛ばす。それは一瞬のようで、長い時間だったかもしれない。







 私が勝った。







 ゴールした私は、着地するとうつぶせに倒れた。ちょっと――無理をしすぎたかもしれない。異常をきたしていなければいいのだが――。
 疲れ果てて、しばらくその状態でいるとぬえが話しかけてきた。
「さっすがぁ!やるじゃない!!――それじゃ、霖之助の記憶を元に戻してあげるわ」
 その言葉を聞いてすぐに、私は香霖の所へと走り出した。

*******


 魔理沙が帰ってきたようだ。結果は――勝利したらしい。良かった……。ドタドタ、と音がしてから、激しく扉を開く音がした。魔理沙がやってきたのだ。魔理沙はベッドに横たわる霖之助に近づくと、霖之助に声をかけた。
「香霖!香霖!大丈夫か!?」
 その魔理沙の呼びかけは、数分続いた。そしてその後、霖之助はゆっくりと目を開いた。
「……!!香霖!良かった!」
 まだ横たわったままだが目覚めただけでも嬉しいらしく、魔理沙霖之助を抱きしめようとした。
 だが、それは次の霖之助の発した言葉で遮られた。
「――記憶」
 魔理沙が抱きしめようとした体勢のまま硬直したのが見てとれた。記憶……?どういうことだ。霖之助の記憶は元に戻ったのではないか。霖之助は、記憶記憶記憶、と不規則に呟きだした。魔理沙と早苗はその様子に困惑していると、背後にある魔理沙が入ってきた扉から声がした。振り返ると、ぬえが扉に寄りかかって笑みを浮かべていた。
「正体不明を解除したのは「記憶」という言葉だけ――全て元に戻すとは言っていないわよ?」
「ふざけるな……」
 魔理沙を見ると、激しく激昂しているようだった。ぬえは何か言いかけていたが魔理沙はもう聞く気にならないようだ。
「ふざけるな!!ここまでやって、しかも勝ったのに!お前は嘘をついていたのかよ!!?」
 立て続けに魔理沙がそう言う。ぬえはまだ笑みを浮かべたままだ。
「お前――!!」
 魔理沙はぬえの胸倉を掴むと、窓へと放り投げた。窓が割れる音がするとともに、ぬえは香霖堂の外へ放り出された。続けて魔理沙がそこから飛び出すと、ぬえに向けてミニ八卦炉を構えた。
「くらえ!マスタースパーク!!」
 魔理沙がマスタースパークを放った。それがぬえへと向かっていく。このままいけば直撃だ。ただでは済まない。
「――調子に乗るなっ!」
 だが、ぬえはそれをいとも簡単にかき消した。そしてすぐにぬえは力強い弾幕を放った。弾幕魔理沙へと向かっていく。魔理沙は反動で身動きが取れない!早苗は魔理沙を助けようと窓から飛び出そうとした――が、何者かに背後から肩を掴まれて部屋の中へと突き戻された。それをやったのは――霖之助だった。
 霖之助魔理沙のことを突き飛ばした。それに魔理沙は驚愕し、悲鳴に近い声を上げた。
「香霖?!記憶が戻――!?」
 霖之助魔理沙に向かって微笑むと、弾幕を全て受け止めた。
「香霖!香霖!!待ってくれ!!香霖――!!!!」







 周囲は、眩しい光に包まれた。








 光が収まると、そこに霖之助の姿は無かった。何も無かったのだ。霖之助は――死んだ。
「あ……あ……ああ……」
 それを見た早苗は絶句した。また、魔理沙も然りであった。だが、悲しみの重さは――魔理沙の方が大きい。ぬえは、生命を――形すらも奪ってしまうほどの本気の弾幕を放ったのか!?何故そこまで出す必要があった!?
 早苗はぬえの方を見た。こんな事になっていても尚、嗤っているのだろうか――と思っていたが、ぬえは予想とは裏腹の様子だった。まるで信じられない物を見たかのような表情を浮かべ、全身が小刻みに震えていた。
「ち、が……う……私は、そんなに強い弾幕を放っていない……軽くやっただけ……なのに……奪うつもりなんて……最初から無かったのに……」
 ぬえは自分に言い聞かせるように呟き、そしてどこかへ飛んでいってしまった。
「あ――魔理沙さん!ぬえさんを捕まえてきます!」
 それだけ告げて、早苗は香霖堂を飛び出した。




 辺り一帯を全力を尽くして探し回ったが、ぬえが見つかることはなかった。気持ちが晴れぬまま渋々香霖堂へ戻った早苗は、入口の扉を開いた。
 見ると、いつも霖之助が座っていた場所に魔理沙が座っていた。魔理沙の膝の上には霖太郎。
魔理沙さん……」
 早苗は声をかけると、魔理沙が早苗の方を向いた。
「私……香霖のことで我を忘れてた……。あんなことしなければ香霖は死なずにいたかもしれないのに……はは、情けないな。さっき早苗に『自分勝手な行動は駄目だ』って言ったばっかりなのに――でも、いい例になっただろ?」
 魔理沙が自虐的な笑みを浮かべながら言う。普段の元気を取り繕うとしていたが、明らかに声は震えていた。
「いい例だなんて……そんな風に見ることなんか出来ませんよ」
「それもそう、だな……」
 静寂が出来た。それはとても重苦しく、切なかった。すると、魔理沙がゆっくりと、自らの腹部をさすりながら静かに喋り始めた。
「私のお腹にはな……もう一人の子供が出来ていたんだ」
 早苗はそれを聞いて驚愕した。
「そんな……そんな大事なこと、今までどうして黙っていたんですか?」
「皆を驚かせて、喜ばせようとしたんだ……それでも、香霖には伝えられなかったけれど……」
 早苗は何も言えなかった。魔理沙は一旦深呼吸をした後、話を切り替えた。
「早苗……私はこれから、この店を経営していこうと思うんだ。それだけじゃない。香霖がやりたかったこと、やっていたこと。全部私がやるんだ。私が、香霖の代わりになるんだ……っ」
 魔理沙の声は震えを増していくばかりだ。涙を堪えて耐えられないのだろう。
「行ってくれ、早苗。……お前にしか出来ない、やるべきことがあるだろう」
 それを聞いて、早苗は頷いていた。今は一人にしてあげるべきだ――。早苗は振り返り、扉に手をかけた。
「早苗。――香霖と霖太郎、守ってくれて……ありがとな」
 その言葉を聞いた瞬間、早苗は頬に涙が流れたのを感じた。
 どうしてこんな事に――……





 早苗が出て行った後、部屋を眺めた。香霖の分まで。そうだ。やるんだ、私は。そう心の中で意気込んでいると、膝の上にいる霖太郎が話しかけてきた。
「ねー、おかーさん。おとーさんは?」
 ―――――!!!
 霖太郎のそれはひたすら無邪気で、その無邪気さが仇となりとうとう堪えきれなくなった涙が溢れ、それからしばらく止むことは無かった。
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 愛する人の、全て私が引き継ぎこれからもずっと忘れずにいようあの人のこと――







あとがき
四章終わりです!く~疲れました!例の如く最後の一文は恋色マスタースパークのサビと合わせて歌えます。
ええ、やっぱり鬱なんです。ギャグで行くのは無理です。シリアスじゃないと詰みます。
そんなことはさておき、さてこの物語もちょうど中盤辺りかな…。残り三章くらいにしたいと思ってます。
それでは、また次回。

【東方小説】東方刻奇跡 21話「飛沫と夕焼け」

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(引き続き魔理沙視点)
 異変に気付いた私は辺りを見回し、真下にある湖を見た。そこから無数の水玉――大きさは私自身と同じくらいのようだ――が吹き出してくるとともに人影が二つ。その大きな水玉は弾け、私とぬえを含めた辺り一体をずぶ濡れにさせた。虹が綺麗だ。
「これはっ…ムラサね!」
 ぬえがそう叫ぶと、人影が露わになった。村紗――村紗水蜜と小傘だった。恐らくあの後すぐに村紗が小傘を助け、次の仕掛けを作動させたのだろう。それにしても速い。
 それと――これは作者の素朴な疑問なのだが、何故村紗は「村紗」で呼び方が定着しているのだろうか。水蜜でもいいじゃないか。こっちのほう可愛いじゃないか!今ゲームで確認したら名前出た時に「ムラサ船長」って書いてあったよ!そりゃあこっちのほうが定着するに決まってるじゃないか!!でも何か可哀想じゃないか!!何でこんなに名前がかわいいのに苗字のほうが浸透してるんだ!!水蜜って名前可愛いだろ!!可愛いじゃん!!可愛
 姿を現して早々、小傘がドヤ顔でこちらを指差してきた。
「ふふん!今度はさっきみたいにはいかないわよ!」
 今度はタンクのような形状の箱を持ってそれに突き刺さったチューブをこちらに向けてきた。
「くらっちゃえ~!!」
「あっ小傘!」
 途中で村紗が止めに入ろうとしたが、小傘はそれを聞かずにチューブから液体のりを放った。私とぬえは抵抗せずにそれを受け止めた。そしてすぐに私とぬえにかかったのりは身体からはがれ、落ちていった。
「あ、あれ?なんで……」
 首を傾げる小傘に村紗が呆れながら助け舟を出した。
「小傘……私たちが出てきたときに目くらましに水玉を弾けさせたでしょう?その時に二人の身体は濡れているからのりがくっつく訳がないのよ」
 それを聞くとともに小傘の顔が蒼白になっていった。
「あっ……やっちゃった……」
 ずーん、とあからさまに小傘が暗くなる。まあ、分かっていたといわれれば分かっていたのだが。
「……なんだか拍子抜けしちゃったわね。進んじゃっていいわよ」
 村紗にそう言われた。いや、仮にも仕掛け人がそんなことを言っていいのか……。とかなんとか考えているうちにぬえが滝を上り始めた。
「あっ!おい、待てよぬえ!」
「ふふ、ボーっとしてるほうが悪いのよ!」
 私は箒で滝を上り、ぬえを追いかけた。









 滝を上りきると、そこは夕焼けだった。そう、あの異変の時もここを上ったら夕焼けになっていた。美しい景色に魅了されたものさ。そういえば、あの時の異変は早苗たちのだったか――今思えば、本当にトラブルメーカーだよな。ふ、と箒を飛ばしながら私は笑みが漏れていることに気付いた。駄目だ。今は香霖のことだけに集中しよう。
 すると、風を切る音が聞こえた。その瞬間には目の前には射命丸文がいた。
あやややや。あなたたちそんなに急いでこの先に何の用があるっていうのですか?」
 文が困った表情を浮かべながら笑った。ちなみに今も箒を飛ばしている。余裕で追いつく上に普通に会話するのか――さすがは幻想郷一の速さ、というところか。
「悪いな文。今はちょっと大事なことをしている最中なんだ、話している暇は無い。大丈夫だ、ただ駆け抜けるだけだから何もしない」
「……ふむ。ただならぬ状況のようですね。――しかし、ここまでくる道中にかなりの被害をもたらしているようですが?」
 文がメモ帳を取り出して開き、それを見てペンの頭を唇にあてがいながら言った。それに対して私はさっきの二人を思い出して即答した。
「それなら命蓮寺の連中が責任取るってよ!それらは全部そっちにしてくれ!」
 その言葉にぬえは驚愕し、怒りを露わにしていたが無視した。それを聞いた文は長考の末に納得したようで、メモ帳になにやら書いた。
「分かりました。今回は見逃すことにしましょう。しかし、あまり長居をすると容赦はしませんよ?それでは」
 メモ帳をパタン、と閉じながら文は言った。私はそれに――ぬえの意見はスルーして勝手に――力強く頷いた。再び風を切る音が聞こえたと思うと既に文はそこにいなかった。本当に速いな……憧れてしまう。さあ、レースに集中しよう。この先は守矢神社か――何か見つけたら早苗に報告してやらないとな――。






To be continued…

【東方小説】東方刻奇跡 20話「ぬえVS魔理沙」

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 香霖堂へ戻った早苗は、椅子に座ってベッドに横たわる霖之助を見ていた。ゲームが始まる前に魔理沙霖之助を介抱したので早苗にすることはない。強いていうならば――見張りか。と、そんなことを考えていると、視界の隅に影が。見ると、霖太郎がそこにいた。霖太郎は霖之助に駆け寄ると、ベッドに潜り込んだ。
「えへへ…おとーさん、あったかい……」
 そして霖之助に抱きついて、いつしか眠ってしまっていた。その様子を見ていると、私もうっかり眠ってしまいそうだ――だが、魔理沙に頼まれたのだ。油断するわけにはいかない。
 魔理沙さん、頑張って――。




***魔理沙****

 くそっ……なんでこんなことに……。なんでぬえは香霖を襲ったんだ。暇ならもっと別の奴を当たれよ。どうして香霖なんだ。やめてくれよ。でも――殺していないから、まだ大丈夫。このゲームに勝てばいい話なんだ。記憶を取り戻して元に戻して、それから……香霖に大切なことを伝えるんだ。きっと喜ぶよ、香霖も。
 それでも私は冷静になれずに、狼狽していた。まだぬえを疑っている。仕方ないだろう。大好きな人があんなことをされれば誰だって……。そして私はつい、談笑しているぬえと早苗に向かって怒鳴ってしまった。こっちは焦っているというのに……腹が立つ。負けるもんか。勝ってやる。絶対に。……ただ一つ心配があるとすれば……今の私の状態で全力を出せるのかどうかということだ。――いや、そんなことを考えている余裕はない。とにかく勝つんだ。
「早苗……香霖、任せたぜ」
 私がそう静かに告げると、早苗の顔が引き締まるのが見てとれた。早苗……本当に香霖を頼んだぞ。ぬえの掛け声とともに私は箒を全速力で飛ばした。――私も、もっと気楽に行くべきなのかもな――。
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(今回の挿絵適当で申し訳ない)



 しばらく進むと、そこは妖怪の山の麓だった。ここは面倒事を起こすと厄介なのだが――本当に仕掛けがあるのか?……と、浮かびながらそんなことを考えていると登山口のほうから小傘がやってきた。何か白い液体のようなものが入った大きなタライを抱えていて重そうだ。
「く……う、ん…しょっと……うらめし……や……っ」
 そしてゆっくり飛んだ。安定していなく、どこからどう見ても今にも零れそうだ。すると、同じく登山口のほうから白狼天狗が二、三人やってきた。なんか白い液体がこびりついている。
「に、逃がすか!よくも同胞を!!」
 その天狗たちはフラフラ、というか、生まれたての小鹿のような動きをしている。白い液体がこびりついているのと何か関係があるのだろうか?
「てへへ、ごめんなさ~い。にとりちゃんから貰ったこれ、重くてつい……わわっ」
 反省の色ゼロといった様子で小傘が喋っていたが、その途中でバランスを崩して白い液体がタライからドバドバ、と落ちた。そしてそれが白狼天狗たちに見事的中した。そのせいで白狼天狗は文字通り真っ白な物体になってしまった――いや、まあ白狼天狗だから元から白いと言われれば白いのだが。
「……あー……」
「――!!――――!!!」
 小傘が言葉を失うのが見てとれた。白狼天狗たちは言葉をまともに話せずになにやら悶えていた。というかあれじゃあ息が出来ないだろう。
「ごめんね!水を被ればその、「ちょうきょうりょくしゅんかんせっちゃくえきたいのり?」はとれるってにとりちゃんが言ってたから、頑張ってね!……じゃあ、行くよ~!ぎゃおー!障害物だぞ~!」
 今度は小傘はこちらを向いて液体のりを構えた。そうか。あれはのりだったのか。香霖のとこで見たことがある。大抵のものならくっつけてしまうものだって。それに河童が何かして強力なものになったんだろう。それでさっきの白狼天狗は動きにくそうにしていたのか――身体がくっついて動かないから。口ぶりからして、登山口の奥のほうではもっと別の白狼天狗がやられているようだった。
 そんなことを考えてる内に、小傘は転んで下半身がのりによって固定されていた。
「わあああ!やっちゃった!!誰か、誰か水~!」
 ………………。
 これまでの経緯を静かに見ていた私とぬえは、小傘をスルーして登山口の中へと入っていった。
「あああああああ!!ひどいー!!」
 小傘の泣き混じりの声を背に、奥へと進んでいった。予想通り、白狼天狗が何人かのりによって地に這いつくばることを強制されていた。
 これあとでなんかされるんじゃないのか……。





 それから私とぬえはまた全速力で駆け抜けた。少し燃えてきたぞ。すると目の前には大きな滝がそびえ立っていた。そうか、この先は守矢神社か。少し気が進まないな……。そういえばあれ以降早苗はここに来ていないんじゃないか。一度調べてみるのも悪くないと思うが……後で言っておこう。とにかくゲームの順路は守矢神社の上を通り過ぎるだけだから良しとしよう。
 滝を上ろうとすると、突然地響きが起こった。そしてどこからか水の音が聞こえる。これはなんだ……?






To be continued…


あとがき
ギャグ考えるのやっぱり苦手です

【東方小説】東方刻奇跡 19話「ゲーム」

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「お前はっ……ぬえか!香霖に何をしたんだ!」
 人形のように倒れ、硬直している霖之助を抱きかかえながらぬえを睨んで魔理沙が叫んだ。ぬえは、へらへらとした様子だった。
「何をそんなに激昂しているのよ。心配しなくても、ただ記憶を正体不明にしただけ……生きているわ、殺してない」
「同じことだろ!!今すぐ元に戻せ!!」
 魔理沙が床をどん、と力強く叩いている。これまでに起こった二つの出来事から――早苗の話のみで直に見たわけではないのだが――現在の事態を重く見ているようだ。
「いいわよ。ただしゲームをクリアしたらね。暇なのよ、付き合いなさい。大丈夫、ただの暇つぶしだから安全は保証してあげるわ」
 ぬえがおちゃらけた様子のまま言葉を発していた。そうか、ぬえはこれまでに起こった出来事――恐らく早苗自身に起こったことも――知らないのだろう。何か知っていたらそもそもここには訪れないはずだ。わざわざ関わりに行きたくない、と思うはずだからだ。つまり……ぬえは本当に暇つぶしでこういうことをしているのだ。憶測にすぎないが、そう考えると少しは気が楽だ。早苗はしゃがんで、警戒している様子の魔理沙に声をかけた。
魔理沙さん。ぬえさんは悪気は無いようですよ。本当に暇つぶしのようです。……ここは、大人しく従っていたほうがいいと思いますよ」
 その言葉を聞いた魔理沙は、まだ疑念が晴れないといった感じだがどうやら納得してくれたようだ。霖之助をゆっくりと横たわらせて魔理沙は立ち上がると、きっ、とぬえを睨んだ。
「……私は何をすればいいんだ。何をさせる気だ」
「レースよ。幻想郷を外枠に沿って空を駆け抜けて、その道中にある障害物を乗り越えた上で先にゴールした方の勝ちよ」
 ぬえが立ち上がった魔理沙に近寄って顔を近づけながら言った。至極単純なものだった。良かった……今度は緊迫したような気持ちで見ている必要は無さそうだ……って、いやいやいや。私にだってやるべきことはあるだろう。
「ちょっと待ってください。私は手助けしてもいいんですか?」
 ぬえは身体を少し仰け反らせてさかさまの顔を早苗に向けてきた。
「あー?あなたはそもそもお呼びじゃないのよ。そこらへんで見てれば?」
 お呼びじゃない、って……まあ、事情を知らないんじゃ仕方ないか……。
「じゃあ、早速始めましょ。あ、乗り物は箒で十分よ」
 ぬえが再びそう声を出して、早苗たちは外へ出た。



 外へ出ると、少しだけ雲が立ち込めていた。
「ここからスタートで、あそこを一直線にすすめば後は目印が何とかしてくれるわ」
「ぬえさん?ちょっと二つほど疑問をいいですか?」
 早苗の突っ込み混じりの疑問の声にぬえは首を傾げた。
「ぬえさんのそのUFOっぽいものはなんですか?」
 そう、これから始まるレースで使うのか知らないがぬえはUFO?みたいな物体を用意していたのだ。
「もちろん、これでレースをするのよ」
 やっぱりか!早苗は思わず呆れた声を漏らした。
「あのねえ、こういうのは気分が大事なのよ。き・ぶ・ん」
 人差し指を立てて揺らしながらぬえはそう言った。しかしこれはどこに掴まるのだろうか。まさか円盤の上の北半球にしがみつくのか?……想像すると凄くシュールなのだが。
「それで、もう一つの疑問ってのは?」
 しょうもないことに深く考えに入っていた早苗は、ぬえのその言葉にはっと我に返った。
「そ、そうでした。ぬえさんの言う障害物とは一体誰が用意したんですか?まさかぬえさんが用意したんじゃないですよね?」
「違う違う。そんなんじゃつまらないわ。小傘の奴に頼んでおいたわ。きっと驚かす能力をうまく使ってくれるはずだよ(棒)」
 小傘――例の唐傘お化けか。あの妖怪に任せてもいいのだろうか――。
「おいっ!!早くしろよ!!」
 二人の談笑にイラついたらしく魔理沙が怒鳴った。それを聞いたぬえは話を持ち直した。
基本的に時間は無制限。相手同士を邪魔するのは無しよ。……こんなところかしら。さあ、始めましょう」
 ぬえは走ってUFOに飛び乗って北半球にしがみついた。あ、やっぱりそう乗るんだそれ……。それを眺めていると、横から魔理沙がやってきた。
「早苗……香霖、任せたぜ」
 静かにそう言われたので、つい早苗は顔を引き締め、強く頷いた。それを確認した魔理沙は箒に飛び乗って、スタート地点についた。


「じゃ、行くわよ……ゲームスタート!」






To be continued…