毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 6話「早苗、神様を…」

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 魔理沙霖之助が恋人同士になってから数日後、早苗はいつも通り買い出しに来ていた。すると、里が騒がしく感じた。一体なんだというんだ。少しだけ覗くと、なにやら宗教関連の騒ぎが起こっているようだ。これは一大事!早苗はすぐに神社へ帰り神奈子と諏訪子に伝えた。
「神奈子様!諏訪子様!なんだか麓のほうで宗教戦争みたいなことやってるみたいですよ!私たちも参加しましょう!」
 部屋に入るや否や笑顔で早苗がそう告げるが、神奈子は暗く、思いつめた表情をしていた。そして次の瞬間冷ややかな声で告げた。
「駄目よ。早苗。お前は行くな。」
 そのあまりにも冷たすぎる声に、早苗は恐怖すら覚えた。それも、ただの恐怖ではない。神奈子から初めて感じた異様な恐怖だった。なんだ、これは…?
「…どうしてですか?せめて、見るだけなら…」
「何がなんでもよ。観戦もしちゃ駄目。それより買ってきてほしいものがあるのよ、お願いできるかしら」
「…わかりました…」
 何を言っても聞かない様子だった。仕方が無い…しょんぼりと早苗は立ち去る。
 早苗がいなくなった後、壁によりかかっていた諏訪子が静かに呟いた。
「…別に観戦ぐらいさせてやっても良かったんじゃないの?」
 その言葉に神奈子は肩をぴくりと震わせる。こちらも静かに言い返す。
「駄目よ…駄目。絶対に駄目よ」
 頑なのままの神奈子を見て、諏訪子は大きく溜め息をついた。そして座っている神奈子の隣まで歩いた。
「…私にはあんたが考えてることがわからないよ。そもそも、信仰が足りてないのに何故参加しないわけ?」
 神奈子は諏訪子の言葉を聞いてもなお、動かず、喋らずを繰り返していた。
「…黙らないでよ。全部お前がサボっていたからじゃない!!」
 諏訪子は神奈子の胸倉を掴んで壁まで押し付ける。違う。サボっていたんじゃない。違うんだよ、諏訪子。
「全部、全部全部!お前のせいなんだよ!!」
 諏訪子の凄まじい剣幕で罵られながら、神奈子は下唇を噛み締めた。何も、言い返せなかった。








「お前のせいで、早苗は一人ぼっちになっちゃうんだ!!!」








 神奈子に頼まれた買い出しをしに、再び人里へやってきた早苗は、買うべきものを確認していた。
 ううん…何か飾り物でも作るのだろうか…?書いてあるものは木の板や紙などの素材ばかりだった。一体何をするつもりなのだろうか…?
 紙を見ながら難しい顔をしていると、余所見をしていたからか里の人間とぶつかってしまった。
「あっ!す、すみません!余所見をしていました…」
 ぺこり、を頭を下げてから戻すと、背が高く髭を蓄えた男性が目の前に立っていた。どこかの家族の父親でしょうか…?謝ると、その男性は明るく会話してくれた。
「いやぁ、気にすることはないよ。お嬢ちゃん、山の神社の娘かい?噂には聞いていたけれど…いい体してるじゃあないか…」
 そういうと、その男性は早苗の体をじろじろ見てきた。そりゃ早苗は可愛いからね。うんしょうがない。さなぱいだからね。さなぱいだからね。さなぱいだからね。それを聞いた早苗は少したじろって警戒した。すると男性は頭を掻いてすぐに謝ってきた。
「あいや、すまねぇ。冗談だよ。あまりに可愛かったもんだからさ…ま、お勤めご苦労さんっと」
 早苗の横を通り過ぎながら早苗の頭をぽんぽん、と叩くと立ち去っていった。なんだか、とっても面白い方だなぁ。きっと家族の方にも愛されているのでしょう…。そう思った早苗は、買い出しの続きを開始した。

 男性は、早苗から去った後角を曲がった。そこには息子がいた。
「おぅ、ここにいたか!待たせたな!ほら、おみあげだ!」
 男性は懐からわたあめを出して、息子に渡した。
「わーい!ありがとう父ちゃん!ねえねえ、早く見に行こうよ!戦い!」
 戦い、というのは…今霊夢魔理沙などが行っている宗教戦争のことだろう。それを聞いた男性は強く頷いた。
「よしっ!じゃあ行……………く…………………………か………」
 男性は突如脱力して、その場に倒れた。無論、息子が駆け寄り男性のことを揺り動かした。
「父ちゃん?どうしたの父ちゃん?父ちゃん……?」
 既に、男性は息をしていなかった。
 息子はそれに気付くことはなく、ずっと亡骸を揺り動かし続けた……。




 買い出しを終えた早苗は守矢神社へ帰り、神奈子に買ってきたものを渡すと自室に戻り、ゆっくりと休むことにした。その頃には既に夜は更けていた。実は早苗は、昼間の宗教戦争を遠くから少しだけ眺めた。それを眺めていると、何故神奈子はあそこまで止めようとしたのか、考えるばかりだった。無論答えは出るはずもなく、ただうやむやな気持ちだけが漂い続けた。
 しばらくのんびりしていると、神奈子に呼ばれた。なんだろうと神奈子が待っているという神社本殿へと歩いていった。
「早苗、突然だが奇跡を使ってほしい。この者のことを幼児辺りまで退化させてほしいんだ」
 その言葉に、早苗は驚いた。
「…何故!?何故そんなことを!?なにか得があるのですか?!」
 そう叫んでも、神奈子は頭を振るだけだった。分からない!昼間の時からそうだ!一体神奈子様は何を考えているのだ!?いや、待て…この人間…何か、様子が変じゃないか…?まるで生気を感じない…。いや、あれこれ考えていても意味は無い。とにかく今は神奈子様の仰せの通りに――。
 早苗は奇跡を発動した。何故か予想より何倍も早く詠唱が終わっていたが、かまわない。早苗はその人間に向けて奇跡を放った。まばゆい光が辺りを包んで――……



 人間がその奇跡を跳ね返した。
 奇跡が自分に向かってくる。避けられない。――この人間、人間じゃない…人形…?まさか、こうするためだけに作られた、人形…!?昼間の買い出しは、これだったのか…なんで、こんなことを…!!
「神奈子様?神奈子様!?なんでっ…なんで!?」
 神奈子の表情は読み取れないが、一筋の涙が落ちているような気がした。後ろから諏訪子もやってきた。
「早苗…生きてくれ…私たちの分まで…神も…宗教も…何もかも全て、忘れて…」
 そういうと、神奈子と諏訪子の姿はうっすらと消え始めた。もっとも、全て消える前に早苗の視界は白い光に包まれていた。
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「神奈子様!諏訪子様!!――ッ、神奈子様――――――……」
 そうして早苗の意識は途切れた。







 思い出が走馬灯のように流れる。







「凄いですね。今日は七夕ですか~。短冊にお願いなんて、いつぶりでしょうか。久しぶりにやろうかな」
「いいんじゃない?童心に帰って書いてみるのもいいかもよ?」
「む~、ひどいですよ諏訪子様。私はまだ女子高生なんですよ?」
「で、なんて書いたんだい?」
「私は…」
   幻想郷が、幸せになりますように。
「ふぅん…華の女子高生とは思えない内容だね?」
「い、いいじゃないですか…私はこの世界が好きになったんですよ。だから、みんな幸せになれれば…それでいいんです」





  神奈子様と諏訪子様は、私にこういいました。
  信じることは忘れるなと。

  神様は、私にこういいました。
  お前自身も信じ続けろと。

  かみさまは、わたしにこういいました。
  しんこうははかなきにんげんのためにと。

  かみさまは、かみさまは、かみさまは、かみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまはかみさまは――……

  かみさまって、だあれ?





――……






○がつ×にち なまえ:こちやさなえ
わたしは、こちやさなえです!げんきな、こどもなのです!でも、ちょっとだけへんなかんじがします。なにかだいじなことをわすれているようなきがするのです。ですが、それをおもいだそうとするとむねのおくやあたまのなかがいたくなってしまいます。なんででしょうか?わたしにはわかりません。なにか、びょうきかなー?そんなときは、わたしをあずかってくれているというりんのすけさんに、かんびょうをおねがいするのです!えへへー、えらいえらい!さなえ、えらい!そして、りんのすけさんもえらい!あのねあのね、りんのすけさんはすごいんですよ!わたしのしらないこともいろいろしっているし、もののなまえはなんでもわかるのです!えへん!それと、りんのすけさんの「こいびと?」のまりささんもすごいんです!しろくろで、とってもかっこいいんです!だんまくは、ぱわーだぜ!えへへへー!!でも、ときどき、ふたりともとってもしんこくなかおをしてわたしをみるのです。いちにちごとにべつのいろんなひとが「こうりんどう」にやってきては、わたしのことをみていくのです。どうしてでしょうか?わたしみたいな、こどもがめずらしいのでしょうか?きっと、わたしはかわいすぎるから、みんないやされてるんですよ!いや~ん、てれちゃう。りんのすけさんにはなしをきいても、「さなえはとくべつだからね、みんなからあいされているんだよ。」といわれました!やった!やった!うれしいです!これからもず~っと、わたしはあいされていきたいなぁ~!











To be continued...


あとがき
鬱にならないとか言ってた気がするけど、なりました(あっさり)
あと続き遅れまくってほんとにすみませんでした。でも今回結構長かったし…(
これ以降は第2章ということになります、さあ、どうなっていくのでしょうか。
ではでは、続きは近くの日に更新できればいいかなと。また今度。