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毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 18話「エゴ」

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            第四章 継承するもの




「おかえり早苗。何かあったのかい?」
 香霖堂へ帰宅して早々、霖之助が出迎えてくれた。本来ならばさっきのことを話すべきなのだが――今はどうしても話す気にならない。
「すみません…ちょっと、具合が悪いので…しばらく部屋に篭っています」
 そういって部屋を移動しようとした。霖之助に何か用意するかい、と声をかけられたがいいです、と答えた。部屋に入ってすぐに、早苗は寝床にくるまった。
 二度も救えなかった。何も出来なかった。早苗の思考は後悔だけが廻り続けていた。あの時ああしていれば。自分の命を捨てる覚悟で向かっていれば。また何か変わっていたのだろうか――。最早自分自身を咎める気にもならなかった。
 エゴ。エゴイズム。早苗が今考えていることはエゴなのか?助けようとすることは、いけないことなのか?幾ら考えてもまとまらない。神奈子や諏訪子がいないとこんなにも自分は弱いのか――早苗は自虐的に笑みを浮かべた。早苗はまだ幼すぎたのだ。
「早苗、どうしたんだ?そんなに悪い病気でもかかったのか?私でよかったら力になるぜ?」
 何時間経っただろうか、いつまで経っても出てこないからさすがに様子がおかしいと思ったらしく、魔理沙が扉の前にやってきた。堪えていたものが崩れ去った気がした。今はそんな言葉さえ愛おしい。早苗は扉ごしから、感情を抑えきれずに叫んだ。
「私はどうしたらいいんですか!!大変な状況の物事を目前にして、何も出来ない!!周りに流され行動したら、残酷な結末しか残らない…!!こんななら、もう私がやりたいように行動してやる…エゴがなんだ!私は…わたしは…っ」
 とうとう抑えきれずに涙が零れ始め、うああぁあぁ、と嗚咽が漏れた。その間、魔理沙は何も言わなかった。呆れて立ち去ったのだろうか。すると、扉ごしから声。
「早苗。それじゃあ駄目なんだ。自分自身だけ満足出来ても、当事者は満足するとは限らない。エゴなんてそんなもんさ。自分勝手に行動したらそれこそ、もっと残酷なことになっていたかもしれない…」
 ・・・。冷静さに欠けていた。そうだ。その通りじゃないか。尤も、冷静に物事を分析出来ればまた変わってくるだろうが――早苗にそんな自信はない。
「それに、今お前には守矢を復活させるっていう大事な目的があるだろう?他人のことばかり気にしてる余裕なんかないって!深く悲しんでる暇があるなら、目的へ進む!!」
 その言葉がついこないだ想起した神奈子の言ったことと重なった。そう――そうだ。こないだ同じことを考えたばかりじゃないか。何を私は悲しんでいたんだ――。
 がちゃり、と扉が開く音がした。魔理沙が部屋へ入ってきたのだ。
「さあ、叫んで気持ちがすっきりしたろ?涙を拭いて、これからも一緒に頑張ろうぜ!」
 そして魔理沙は手を伸ばしてきた。早苗はその手を掴もうとした。――が、突如聞こえた叫び声によりそれは遮られた。
「…!?今の声、香霖か!?早苗、行くぞ!」
 魔理沙は一目散に部屋を飛び出し、早苗も後を追った。






 いつもの商品置き場に辿り着くと、膝をつく霖之助がいた。その隣には――いつぞやの正体不明とかなんとかのエイリアン――封獣ぬえ。何故ぬえがこんなところに?魔理沙霖之助に駆け寄ると霖之助の身体をゆすった。
「香霖!香霖!大丈夫か!何があったんだ!?」
 返事はない。意識はあるようだが、まるで人形のように動かない。そこでぬえが一言喋りだした。






「話しかけても無駄だよ。そいつの記憶を封印――正体不明にしたから」






To be continued…