毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 9話「明確な殺意」

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 何が起こってるのか全く分からない。何故咲夜が殺されている?咲夜は簡単に殺されるほど弱くはない。まさかとは思うが、そこにいるフランドールがやったのか?だったら何故?――レミリアと咲夜がギクシャクしているのと何か関係があるのだろうか…?
 様々な推測が早苗の中で交差する。しかし、分からない。分かるはずがなかった。早苗は紅魔館の者のことをほとんど知らない部外者なのだから。
 騒ぎを聞き付けたパチュリーと美鈴がやってきた。そして間もなく、絶句した。
「これは…ッ」
 パチュリーが声を上げると、早苗の隣で呆然としていたレミリアがゆっくりと動き出す。そして壁によりかかって脱力している咲夜を抱きかかえた。あまり体温を感じなかったのだろうか、レミリアは少し身体を強張らせた。
「咲夜…?ねえ、何があったの…?いなくなっちゃ嫌よ…!!」
 今にも泣き出しそうなレミリアのその消えそうな声に、咲夜は反応し、ゆっくりと瞳を開いた。
「お嬢…様…」
 咲夜がまだ生きていることに気付くと、手に力を込めた。
「咲夜…!今、『あなたがここで死ぬ』運命を操るわ!だから待っていて!」
 そう焦りながら喋るレミリアを、咲夜がゆっくりと制した。レミリアが疑問と焦りが混ざったような表情を浮かべる。
「いいんですよ…お嬢様。私は、いずれ死ぬ運命…ここで避けてもやがては…。それに、私はもうお嬢様にとって必要のない存在…ですから」
 それを聞いたレミリアは、必死に、悲痛に喚く。しかし咲夜はそれを聞かずに、今にも消え入りそうな声で言葉を発し続けた。
「お嬢様…一つだけ、お願いがあり…ます…フラン、ドールお、嬢様の…ことを――」
 それ以降は早苗の耳には届かなかった。レミリアには届いたのだろうか。

 言葉をなんとか言い終えた咲夜は今度こそ眼を閉じ、それが二度と開くことはなかった。

「咲夜…ッ!――あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 感極まって、紅の吸血鬼は涙する。悲痛に叫ぶ。

 しかし残ったのは、残酷な残響。そして静寂。

 それがまた、レミリアに親愛なる従者が死んだという真実を思い知らせた。







 そして――






 しばらくしてレミリアの涙は枯れ果てた。

 抱きかかえていた咲夜をゆっくり横たわらせた後、立ち上がった。

 その瞬間、レミリアの身体を紅い気圧が包んだ。いや――これは力か。

 レミリアは首だけを動かし、紅く輝く憎悪の瞳で斜め後ろに立ち尽くしていたフランドールを睨みつけた。
「フランドール…貴様ァアッ!!!」
 そしてグングニルを手に掴み、フランドールに向かって駆けた。グングニルがフランドールに当たる――と思った瞬間に、レミリアとフランドールの間が光り輝く。早苗はその光に眼を瞑った。
 光が収まり、眼を開くとグングニルをフランドールが受け止めていた。
 咲夜はさっき、「フランドールお嬢様のことを殺してください」とでも言ったのだろうか?そうでもなければ、あんな憎悪の瞳を向けるはずがない。
 そんな事を考えていると、フランドールは突然笑い出した。
「アハハハハハハ!!ハハハハハハハハ!!!馬鹿みたい!お姉さま!たかが従者が殺されたくらいでそんなに怒るなんて!!」
 フランドールのその言葉に、その場にいる全員が眼を瞠った。フランドールが咲夜を殺したというのは、確定的だった。
 確定的――なのか?
「そんなに怒るならさぁ!一緒に咲夜の所に逝かせてあげるよ!!嬉しいよねお姉さまァア!!」
 フランドールのその言葉に、レミリアは更に怒りの表情を露わにした。早苗は、その声が微かに震えているような気がした。
 レミリアは大きく羽ばたいて、天井を突き抜けていった。そして屋敷の上空まで躍り出た。フランドールもそれに続く。急いで早苗たちも外へ出た。
 そして外へ出ると、レミリアが言葉を発していた。
「…してやる…殺してやる!!貴様だけは!絶対に許さない!」
 そのレミリアの言葉にフランドールは面白おかしそうに笑うと、レミリアの眼を見て告げた。
「ふふっ…お姉さま…私のこの破滅の力に…果たして滅びずにいられるかしらッ!?
 それを聞いたレミリアは大きく叫んだ。
「破滅の力?滅ぶ?…――そんな運命、私が否定してやる!!
 叫び終えると、フランドールが目の前から消えた。それを見たレミリアは周囲を模索する。すると、よく聞いたことのあるが響くように、だが静かに聞こえた。



――――――かーごめーかーごめー…かーごのなーかのとーりーはー…



――――――いーつーいーつーでーやーるー…





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「――後ろの正面だーあれッ!!
 闇に紛れてレミリアの背後に回っていたフランドールは、歌を歌い終えた瞬間にレミリアに攻撃した。

 レミリアはそれをあっさり受け止めると、ゆっくりと振り向いた。
「…言ったはずよ。絶 対 に 許 さ な い と 。」



 そして、残酷な闘いは幕を開けた――。



To be continued…



あとがき
ついこないだまで更新少なすぎたのでこれからは週一更新を心がけようと思います。
つか小説ばっかだなこのブログ…まあいいけど。