毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 38話「信仰は美しき幻想の為に」(完結)

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 暖かく、透き通った柔らかい風が突き抜ける。早苗を、森を、幻想郷を。
 それが通り過ぎた瞬間――大地に活力が満ちていくのがわかった。土や樹木に限ったことではない。倒れている人間と妖怪たちの傷が癒えていく。
「っ……これは……なんで……?」
 怪我が治り、意識を取り戻したらしい霊夢が呟いた。驚いている様子だが、それは霊夢だけではない。その場にいる全員が同様の反応を示していた。
 もちろん早苗も例外ではなく、想定外の出来事に眼を瞠っていた。これが本当に“幻想郷を破壊する力”?傍から見ても、そうは思えない。むしろ、“幻想郷を癒す力”のように思える。
 いや――眼前のそれは、治癒そのものだった。
 “奇跡”。これをそう呼ばずしてなんと言うのか。この力はまさしく奇跡。自分の力として身につけ、使いこなしてきた奇跡だ。
「……有り得ない……っ」
 無意識に言葉が漏れていた。そう思うのも当然である。先程まで幻想郷を傷つけていた力が、その逆に変化することなど、不可能極まりないのだ。だが、早苗はそこまで考えてはっとなった。
 “奇跡”という言葉に慣れ過ぎていたあまり、それを意味するものを履き違えていた。
 奇跡は起こすものではない。起こり得ないことが起こり得るからこそ奇跡なのだ。
 それを理解した途端、ゆっくりと眼を閉じた早苗に過去の記憶が呼び覚まされた。


 その記憶は、前に一度呼び起こしたことがあった。
 そう――あれは、神奈子様と諏訪子様が消える直前、身体が幼児化する直前に見た走馬灯。
 七夕の日に、諏訪子様と二人で。
 私は昔を懐かしみながら、短冊を手にした。
 諏訪子様は私をからかったっけ。
 私の想いを形にして、そうして短冊に書いたのは……『幻想郷が、幸せになりますように。』
 ここが始まりだった。この瞬間から奇跡はゆっくりと、静かに形を成していった。全ては幻想郷を癒すために。
 幻想郷をより良くするために、幻想郷を食らう――信じがたいが、私が無自覚に引き起こしたようだ。この奇跡を。なんて下らなくて、はた迷惑な話だろうか。
 自分自身を嘲笑してから、眼を開いて天空を見上げた。そして覚悟を決めた。この責任は、私自身が取らなくてはならない。
 もう全て理解した。考える必要はどこにもにない。私に出来ることはただ一つ。
 化け物は――いや、“東風谷早苗”は右腕を天に掲げ、そこから清く煌く光を放った。




 ――さあ、終わらせよう。
 そして創めよう、幻想郷を――

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【11/2追記有】秘封祭をプレイした感想。

お久しぶりです。くわない=クウです。
今年の夏コミで頒布されたサークル『四面楚歌』さんのノベルゲーム、『秘封祭』が想像以上に面白かったので、ここに感想を書くことにしました。
あれおかしいね夏コミから二ヶ月以上経ってるね違うことやって先送りにしてたら結構遅れちゃいましたね……。何気なくやり進めたら四日で終わっちゃいましたよ。
これなら夏コミ後すぐにやるべきだったのでは?と思わなくもないですが、この際仕方ない。面白かったしそれでいいんじゃない?


さて本題。

まず「秘封祭ってなんだ」という方は、下記の動画を見ましょう。動画説明文に色々詳細がありますし、OP動画が見られます。

このOPがまた凄くてですね……ゲーム内で流れるタイミングが素晴らしい。こんなん泣くなっていうほうが無理ある。かっこいい動画作りたい
OPにビビッと来た方は、メロンブックスですぐ買いましょう。売り切れる前に、早く。
間違ってもamazonで買うんじゃあないぞ。あれは転売だからな。

四面楚歌さんは、三年ほど前にも「うつつのゆめ」を読んでそれはもう感動したものですが、今回も良いものでしたね。俺のツボを的確に押してくる(どうでもいい)
当時はお金が無くてそれ以降の四面楚歌さんの作品を買い集められなかったですが、今は余裕があるので買いました。じっくり読んでいこう。うん。

それでは、ここから下は感想を書いていきます。
ネタバレが凄いので、そういうのが嫌な方はやめておいたほうがいいと思います。
というかお願いだから初見でプレイしてくれ。

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【東方小説】東方刻奇跡 37話「光」

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 早苗は、幻想郷をあちこち走り回った。自分自身の因果を解くために。
 かつて住んでいた場所も訪れた。それでも判らなかった。一体どうすればこの力を解放することが出来るのか。そもそも、自分の能力なのに扱いきれていないとは、なんとも風祝の名が廃る情けない話だった。
 判らない。判らない。早苗は自分自身の才能を勘違いしていた可能性がある。思った以上に潜在的な力があったのかもしれない。ただ、それを制御出来ないだけなのだ。
「私が……もっと、強ければな……」
 無意識にそう呟いた。全て、自分のせいなんだ。自分が初めから強くあればこんなことにはならなかったのに。――いや、過ぎたことを悔いても遅い。
 諦めない、終わらせる。そう心に誓った。喩え答えが見つからなくても、最後の時まで。
 再び歩み始めようとしたその瞬間。目の前に現れた存在を見て、早苗は驚くことになる。
「リグル……さん……?」
 そう、あの時紫に連れ去られたリグルがそこにいた。しかし、霊夢やフランドールのような仮面はつけていない。まだ操られる前ということだろうか?だが、明らかに様子がおかしい。眼が虚ろなのだ。
「早苗。……人に裏切られる気分はどう?」
 考えていると、リグルが口を開いた。その言葉は、彼女の心境を物語る哀愁が漂っていた。そして、早苗にはすぐその言葉の意図が判った。
 リグルは人間に忌み嫌われ、想いを寄せていた者にすら裏切られた。早苗もまた、計らずとも人間の心の闇に触れ、嫌われた。
「判ったでしょ……?これでもう、人間なんていなくなるべきだって」
 同じだと。自分たちは同じ被害者だと。そう言っているのだ。
「一緒に全部無くそう……?その力なら、どんなものも怖くないよ」
 故に、気持ちが悪かった。簡単に諦め、這い上がらずに絶望し続けているリグルと自分を一緒にされるのが。
「……なんであなたと一緒にされなきゃならないんですか。気持ち悪い。それくらいで諦めて、何が妖怪ですか。私に比べればそんなもの――ただの甘えです」
 リグルの誘いを、早苗は吐き捨てるように断った。不幸自慢をするつもりはなかった。だがそんなことを気にしていられないほど、心に渦巻く気持ち悪さは大きかった。
 すると、まるでその回答を予測していたかのように、リグルは微笑んだ。
「やっぱり、あなたは人間ね。人間って、本当に判らない」
「それが人間ですから」
 その早苗の返答に、リグルは頭上を見上げ、くっくと声を上げて笑い始めた。
「私ね、早苗……もうすぐ、私は私じゃなくなるの。本当に八雲紫の駒にされる。だから――」
 ゆっくりと、早苗をまっすぐ見た。そして急激に早苗との距離を縮め、リグルは早苗の身体を掴んだ。
「だから!私でいられる間に、生命をあなたに捧げる!!幻想郷を破壊できる力を手に入れた、今のあなたに!!」
 早苗は大きく眼を見開いた。
「んなッ……!!」
 引き剥がそうともがくが、既に紫の術がかかっているのか、リグルの肉体は強靭になっていて、それは叶わなかった。
「これで終わる!!幻想郷が!!私を裏切った人間たちのいるこの世界がッ!!アハッアハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――」
 リグルは涙を流しながら高笑いし、……やがて動かなくなった。掴まれた手の力が弱まったのを感じて、早苗は察した。
「……どうして」
 無意識にそんな言葉を漏らしていた。これが彼女の望んだことなのか。そもそも、この力がどういうものかすら判っていないのに、どこにこんな早計な判断をする必要があったのか――。
 目の前で、また死んだ。確かに彼女は、早苗とは全く反対の思想の持ち主であったが、生命まで奪う必要はどこにもなかった。
 その涙の意味はなんだったのか。本当は人間が好きだったのではないか、それとも……。いくら考えても早苗には知る由もない。
 彼女はこれを望んだ。それだけだ。早苗にはどうすることも出来ない。
 早苗はゆっくりとリグルの遺体に触れ、微かに残った温もりを感じながらも埋葬した。
 そういえば、霊夢魔理沙はどうしてるだろう。答えは見つかっていないが、ふと彼女らが心配になった。行き場もないので、一度戻ってみることにした。
 すると、早苗は身体に違和感を感じた。その違和感を振り払いつつ、霊夢たちのいる場所で歩き出した。
 その違和感の正体を、早苗はすぐに知ることになる。

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【東方小説】東方刻奇跡 36話「愛憎」

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 一方、霊夢魔理沙は。
 紫と本気で過激な弾幕勝負を繰り広げ、昼間かと見間違えるほどの眩い光が周囲を包んでいた。
 子を身篭っている魔理沙霊夢のサポートに身を任せ、激しい動きは極力避けていた。
 霊夢が札を投げ、隙を作っては紫に向けてマスタースパークを放つ。紫が弾幕を放ったならば、ミニ八卦炉で弾幕を相殺し、霊夢の活路を見出す。
 見事なまでの連携であった。だが、魔理沙のその動きはやがて鈍くなっていった。体力的に、というのもあるのだがもっと別の大切な心配事があったのだ。
 霖太郎――。
 霖之助との息子、霖太郎を一人にして香霖堂を飛び出してからもう何刻も経っている。ましてや今は夜だ。寂しがって一人で泣いているかもしれない。そう考えると気が気ではなかった。
 そんな様子を見兼ねた霊夢魔理沙を連れて、紫の弾幕をかいくぐり、死角である岩に隠れ、静かに耳打ちをした。
「……心ここにあらずって感じね。あんた、どーせ自分の子供が心配なんでしょ」
 そう見抜かれて、思わず魔理沙は息を飲んだ。その様子に、霊夢は笑みを浮かべた。
「行きなさい。ここは私一人でも十分だから」
「でっでも!お前、相手は紫だぞ……!!」
 思わず身を乗り出して問い詰めようとした魔理沙霊夢は制止して、静かにかぶりを振った。
 大丈夫だから、と。戦ったことのある相手だから平気だ、と。笑みがそう伝えているような気がした。
「ぶっちゃけあんたのことを支えながら戦うの大変だから一人のほうが楽なんだけど」
 魔理沙は漫画のようにこけそうになって踏みとどまった。マジかコイツ……まあ、それが霊夢らしいといえば霊夢らしいんだけど……。
 呆れながら霊夢のほうへ笑みを返していると、隠れていた岩が破壊されるとともに弾幕の群れが襲い掛かってきた。二人はそれを飛んで避けたが、位置が悪かったらしく霊夢との距離が離れてしまった。
「隠れてるくらいならおとなしく負けを認めたらどうかしら」
「隠れているつもりもないし、負けるつもりもないわ。ましてや何も考えずに人間を消そうとする無能にはね」
 霊夢はいつもの口調で紫を煽り、気を引いた。すると、霊夢の瞳だけこちらを向き、アイコンタクトしてきた。
「言うようになったのねぇ……巫女といえど所詮人間。私の思考など理解することは出来ない」
 ここは、あいつの言う通りにするしかないか――すまない、ありがとう霊夢
 そう手の仕草で小さく伝えると、音を立てないように後退りをして、ある程度離れたところで踵を返して走り出そうとした。
 走り出したが故に。
 向き直すこと無く片手のみを魔理沙に向けて放たれた紫の弾幕に、気付くことは出来なかった。
「ッ魔理沙!!――く!」
 霊夢は叫び、スペルカードを発動しようとしたが、背後から取り押さえられた。そこにいたのは、八雲紫の式、八雲藍であった。
 呪縛から逃れようと霊夢は抗うが、力が強く中々引き剥がせない。すると、藍は霊夢に何かを耳打ちした。何を言われたのか、霊夢の動きは止まってしまった。
 放たれた弾幕魔理沙が気がつくのは、もう避けるには間に合わない距離であった。
 魔理沙は眼を見開く。
「え……うわ――」
 ――爆発。とともに鈍く、耳を突くような不快な音が周囲に鳴り響いた。
「ああ……そんな……嘘でしょ、魔理沙!!!」
 我に返った霊夢が悲痛に叫ぶ。紫は、妖艶に微笑む。藍は、何故か苦い顔をして俯く。
 弾幕は、魔理沙に直撃した。その場にいる誰もがそう思っていた。しかし。

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投稿したゆゆゆ動画の解説みたいなもの

御久しぶりです。就職活動および動画製作をしていたら小説が滞ってしまっているくわない=クウです。(書くから…ちゃんと…)

今回は、こないだ投稿したゆゆゆMADの映像解説をしていこうかと思って更新しました。

こちらですね。まずは一度ご覧ください。

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【東方小説】東方刻奇跡 35話「獣の哭き声」

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 更ける夜を頭上に早苗は、森の上を飛んでいた。しばらくして、背後から爆発音や眩しい光が響いてきた。紫と霊夢魔理沙弾幕ごっこが始まったのだろう。
 今更振り向く訳にはいかない。二人の為にも、早苗は突き進むしかない。
 ……とはいえ、これからどうすればいいのか。皆目見当がつかない。もう一度守矢神社へ向かうべきなのか……いや、駄目だ。あそこに戻ればまた信仰を吸収してしまう。
 早苗が行かずに他の者に調査を頼むという手もあるが……こんな状況じゃ、誰が味方で誰が敵か信用ならない。霊夢魔理沙は今紫と戦闘中。
 となれば、今は後回しにするしかない。まだ調べられる場所はある。ゆっくり調べていけば良い話だ。
 ――尤も、そんな時間があれば、の話だが。
 浮遊しながら立ち止まって、腕を組みながら悩んでいると、そんな早苗を見上げる人影が地上にいた。
「降りて来いっ!!東風谷早苗!!」

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【東方小説】東方刻奇跡 34話「紫の誘い」

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 どうして。
 その言葉ばかりが脳裏を支配していた。
 早苗は一目散に妖怪の山を駆け下りて、どこかも分からない森の中を歩き続けている。
 太陽は既に落ちて、淡い月光が早苗を照らしていた。その空虚な瞳には、欠けた月が映されていた。
 私は今まで何のために行動を起こしてきたのか。黒幕は私自身だったのに、それに気がつくことなくたくさんの人を傷つけてしまった。八雲紫の言葉は何も間違いではなかったのだ。考えてみれば、彼女こそ最も幻想郷を愛していると言っても良い。そんな彼女の言うことだから、間違いだと考えること自体が異様である。
 だが――理由も無く消えることを受け入れろというのもまた、早苗には出来ないことであった。また仮にこの現象を八雲紫から直接説明されたとしても、聞く耳を持たなかったであろう。
 敢えて理由を説明しなかったのは、彼女なりの慈悲であったのだろうか。分かるはずもなかった。
 消えてなくなりたい、と早苗は思った。こんな状態の早苗が存在しても、周囲の人間たちを不幸にしてしまうだけだった。
 もう魔理沙の元へ帰ることも出来ない。これから一体どうすればいいのだろう。神奈子と諏訪子に縋りつきたい。しかし、それももう出来なかった。
 確かに早苗の行動の賜物で二柱は姿かたちを取り戻すことが出来たが、近くにいればまたそれを奪ってしまうことになる。会えるのに、会えない。ジレンマであった。
 早苗はこれから永遠に、この暗闇の森の中を彷徨い続けるしかなかった。
 誰にも気付かれず、静かに幻想郷の宵闇に溶け込んで――

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