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毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 30話「喪失」

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 霊夢が、早苗の友達――加奈を攫った。いや、あれは霊夢と言っていい存在だったのだろうか?それすらも、疑問に思ってしまうほどの異常だった。
 外へ出ると、淀んだ雲が空を覆っていた。それを見るだけで、どこか不安になってしまうような気がして――脳裡によぎる嫌な予感を魔理沙は頭を軽く振るとともに追い払った。
 私がこんなことを想像しても仕方ない。一番傷つくのは早苗だ……と、自分に言い聞かせつつ。

霊夢の奴……どこに行ったんだ?」
 香霖堂から躍り出た魔理沙と早苗は、上空に飛び立ち辺りを見回した。注意深く観察していると、魔理沙は隣で早苗が何やら深刻な表情でぶつぶつ呟いているのが見えた。
「早苗?どうした、落ち込んでる場合があったら、助けに行ったほうが良くないか?」
 そう一声かけると、早苗は我に返った。尋常ではない様子であったが、深く聞かないことにした。
「すみません……加奈ちゃんが最後に言っていたことが気になって」
 哀しそうに微笑みながら呟く早苗を見て、魔理沙はふむ、と左手を顎にやり早苗から視線を逸らして遠くを見据えながら記憶を遡った。

 ――あの変な女の人みたいな嫌な感じ。

 そう、加奈はそう言っていた。深読みするまでもなく紫のことを指しているのだろう。あれと同じ感覚、というのはどういうことだろう?
 まさか、紫が霊夢に何かして――。
 直前の嫌な予感が蘇る気がして、魔理沙は急いでその思考を捨てた。それに、今は考えている場合ではない。
 再び早苗を見た魔理沙は、
「とにかく追いかけよう。当てはないが……行くしかない」
 未だ心配事を拭いきれていない様子の早苗を諭すように言った。思考を整理出来たようで、早苗の表情は直前とは違った神妙な面持ちへと変化した。
 そして、右腕を静かに上げてどこか遠くを指先で示した。
「多分……この方角を行けば間違いないと思います」
 揺るがずただ一点を示した人差し指の先は――
 人里。
 いや、人里よりも遥か遠く……か?ここからではどこを示しているのか判別出来ない。少なくとも、妖怪の山ではないようだ。
「どうして、……だ?」
 問わずにはいられず思うままにすると、早苗はもう片方の手の指先で頬をかりかりと掻きながら照れくさそうな顔で言った。
「……勘、ですかね」
 その言葉に、魔理沙は少しだけ驚いた。そんな霊夢みたいなことを言うなんて。……だが。
「なるほどな……ならその勘って奴に一つ賭けてみるか?」
 魔理沙は自然とそう言葉を発していた。『勘』に少しだけ因果を感じたのかもしれない。何にせよ、今はそうせざるを得なかった。
 早苗は魔理沙の言葉に頷き、飛翔の体勢を取った。遅れて魔理沙も同様に。
 二人はほぼ同時に飛翔を始めた。




 飛翔してからしばらく経って、ふと数日前の惨劇を想起してしまった。
 香霖……。
 弾幕を直撃した霖之助は、跡形も無かった。遺体といえる物体は欠片も残されておらず、魔理沙にその身体を抱きかかえることすらも許さなかった。
 あの時のぬえの言葉を記憶の海から搾り出す。
 ――軽くやっただけ。
 嘘をついている様子は無かった。
                            この世界
 鵺ならば殺害することなど他愛もないことのはずなのだが、幻想郷に来て平和ボケでもしてしまったのだろうか……?
 いや、考えるべきところはそこではない。軽くやっただけなら何故霖之助は形すらも残らなかったのだ?
 何か、私の知らないところで大きなものが蠢いている気がする――……。
 魔理沙は横目で共に飛翔している早苗を見た。視線を感じたのか、早苗は魔理沙に眼をやり、切なさすら感じられる瞳で悲しげに微笑んだ。
 それを見た魔理沙は、ゆっくりと微笑み返した。
「……早苗。一人で抱え込むなよ。お前は頑張りすぎだ。これからは私がお前と一緒にいる」
 早苗は、封印が解けてからずっと精神を削られてばかりだ。そんなことは話や様子を見ていれば一目瞭然だった。
 もうこれ以上、早苗を傷つけさせるわけにはいかない。どんなものが来ても、私が吹き飛ばしてやる。
 改めてそんなことを言われて照れたのか、早苗は少しだけ頬を赤くさせた。その様子を見て魔理沙は満面の笑みをして、飛翔の速度を上げた。
 その後に早苗がまた寂しい瞳になったことに、魔理沙は気がつかなかった。
 人里が近づくと、何やら人の群れがあった。不審に思った二人は飛翔したまま群れの中心にいる人間を見た。

 ――瞬間、全身に鳥肌が立った。

 倒れている人間がいた。それも、蟲の大群に身体を喰われた。
 瞳は白く剝き出し、身体中が小さな穴に埋め尽くされていて、そこから血があふれ出ていた。穴だけではなく、明らかに噛み千切られたような皮膚の裂かれ方の部位や、赤く腫れ上がっている部位もある。
 正直、見たくないものだと思った。それは早苗も表情を見る限り同じだろう。だが、これは明らかに異変だ。今すぐにでも調査をして原因を突き止めたいところだが――今最優先すべきことはそれではない。
「早苗……優先順位を忘れるなよ」
 念のため、それだけ声をかけておいた。余計なお世話だったかもしれない。早苗は無言で頷き、それを確認した魔理沙は正面を向きなおし飛翔を続けた。

 続け、



 た?



 感覚が歪んだ気がした。気持ちが悪い。頭が痛く、身体も痺れて動けない。
 たちまち体勢を崩してしまい箒から落ちかける。そこで足に違和感を感じた魔理沙は足に視線を飛ばすと、右足の脛が大きく腫れ上がっていた。
 いつの間にこんな――!?
 箒から落ちるまいと身体を動かして体勢を立て直す為に必死に抗うが、痺れた身体は微塵も動くことは叶わず、箒から魔理沙は落ちてしまった。
 落ちる瞬間に――見た。
 奇妙な蟲を。
「うぁっ……!早苗ぇえっ!!」
 魔理沙は無意識のうちに早苗の名を大きく叫んでいた。早苗がいると思われる方向に視線を飛ばすと、やはり早苗も同様に、青ざめた表情で落ちながら悶えていた。
 このままじゃ不味い!
 そんなことをしている間にも、地面は刻々と近づいていた。それほど上空を飛んでいたわけではないが、当たり所が悪ければ大怪我をしてしまう。
 どうする……?
 焦燥が加速する中で、視界を廻らせる魔理沙の瞳に一本の木が眼に留まった。
 あれだ!
「早苗!木……だ!木に……摑まるん……だ!」
「くぅう……っっっ!」
 痺れる舌に鞭を打って叫んだ言葉に反応した早苗は、引き絞った声を漏らしながら痺れに抗い木に手を伸ばした。それを確認した魔理沙は、早苗と同様の行動を取った。
 身体の痺れで手が中々動かない。動かしている感覚があるかどうかすらも既に危うい。
 これさえ届けば多少は楽に地上に降りることが出来る。
「……うああああああぁああっ!!」


 ――……なんとか届いた。
 幾つもの枝分かれした木の枝のうちの一つを掴んだ。掴んだ衝撃と魔理沙の重量で木は少しだけ傾いたが、枝は折れずに安定した。
 それを見た魔理沙はようやく一息吐いて、枝から手を離し、地面へと降りた。――落ちたと言ったほうが正しいか。
「うわあっ!……あいてててて……」
 見事に着地失敗して尻餅をついてしまった魔理沙だが、すぐに横たわった。身体中を廻る痺れと感覚の違和感は、未だ健在だった。
 魔理沙がほっとしていると、再び何かが落ちる音が聞こえた。早苗だろう。
 早苗に視線を向けると、どうやら掴んだは良いものの枝が折れてしまったようだ。倒れていたが、多少は衝撃は緩和されたことだろう。
 早苗の掴んだ木を見ると、とても木とは思えない程の細さの木だった。あんな木、この辺りにあったか……?
 周囲を見渡すと、どうやら人里とは大分離れたところへ落ちてしまったようだ。
「……なんとか、無事だったみたいだな……」
 そう早苗に向けて言うと、息を切らしながら早苗は微笑み返してきた。
 今も身体が痺れたままで、笑っている場合ではないのだがひとまず安心だ。
 足の腫瘍は変化が無い。痛みは激しいはずなのだが、感覚が麻痺していてよくわからない。
「これは一体なんでしょう……?」
 早苗が自身の腫瘍――腋に出来ていたようだ――に視線を向けながら、そんなことを呟いた。早苗には分からないようだが、魔理沙には何となく察しがついていた。
「……たぶん、リグルの仕業だ」
 箒から落ちる瞬間に見た蟲。あれはリグルのものであろう。
 蟲を自在に操る妖怪、リグル・ナイトバグ。さっきの人間といい、何かしら関わっているのは間違いがなかった。
 それにしても皆目検討がつかない。リグルはこのようなことをするとは考えられない。
 ただでさえ今は忙しい状況なのだというのに、邪魔をしないでほしい――……?
 そして、脳裡に予感が過ぎる。
 まさかリグルまで……?そんなはずはない。だが霊夢は紫側だった。紫は一体どうやって、何人早苗の敵を増やしたんだ?
 思考を廻らせていると、一方から足音が聞こえてきた。呻き声を上げながらゆっくりと動いて、その足音の主を見た。
 ――瞬間、魔理沙は眼を見開くことになる。
 リグルがそこにいた。どこか悲しげな瞳の彼女は、ゆっくりと魔理沙と早苗の元へと歩いて来ていた。
「おまえっ……リグル!!一体何が目的で……ぅぐっ!」
 叫び、立ち上がろうとしたが、痺れてそれは叶わなかった。
「動かないほうがいいよ。私の放った蟲が持つ猛毒は反抗しようとすると更に獲物を縛り付ける」
 静かに口を動かすリグルのその言葉を聞いて、魔理沙は抵抗するのをやめた。再び地面に倒れ言った。
「一体……何でこんなこと……今は急いでるんだ……!」
「別に。あなたたちに恨みなんてない。……ただ、人間はもう、信用出来ない」
 くっ、と小さく声をあげ歯を食いしばったリグルは、苦痛に満ちた表情を浮かべた。
「あなた……どうしてそんな事を言うのですか?」
 早苗が苦しみながらもそう言った。それを聞いたリグルが反応して呟いた。
「……折角だから教えてあげる。私の恨みの根源を」
 リグルは魔理沙たちとは反対方向に向いて語った。
 ある日、森の中で男性と遭遇した。最初は警戒し、蟲で殺そうとも考えた。けれどその男性は、やたらとリグルに親しみを持っていた。
 やってきては追い返し、やってきては追い返しを繰り返すうちに、やがてリグルも男性を気になり始めてきていた。
 まずは話を一緒にした。次に幻想郷を二人で廻った。一緒に寝泊りする時もあった。日々を重ねるうちに、リグルは完全に男性に好意を持っていた。
 今日も今日とて男性と会う約束を交わし、告白をしようと思っていたのだ。
 男性がやってくると。
 リグルは襲われた。
 近寄ると同時に、男性はリグルの胸倉を掴んでそのままリグルを木に叩きつけた。
 全ては演技だったのだ。リグルを油断させ、退治するための。
 男性は邪魔だと言った。ウジウジ湧き出す蟲如きが。こんなゴミを生み出す根源であるクズは今すぐに死ね。お前は里でも忌み嫌われている。お前は必要とされていないと。
 信頼して、好意すら抱いていた男性に裏切られ、罵倒され、挙句の果てには殺されかけ、リグルの中で何かが切れた。
 自分の声かどうかすらも分からない叫び声の後、気がつけば男性は惨殺されていた。
 そしてリグルは人間を信頼しようとするのをやめた。むしろ、全て根絶やしにしようとも思った。
「人間なんてそんなものだったんだね。もう全部分かったよ」
 リグルが達観したような言葉を漏らす。
 酷い話だった。人間の醜さが露見されていると言っても過言ではない程に。
 魔理沙の脳裡には、さっきの惨死体が映っていた。あれは恐らくリグルの話す男性だったのだろう。
「人間は全て……この手で殺してやる」
 リグルは手を空にかざし、その手を握り締めて胸に置きながらそう言い、二人がいる方向に向き直った。
 そんなことさせるか、それは早とちりだ、と魔理沙は叫ぼうとしたが、唇が思ったより動かずにいた。
 魔理沙がようやく口を開こうとした瞬間に、立ち上がる音が聞こえた。
 早苗だった。
「な……なんで!毒は!?」
 最初に声をあげたのはリグルだった。
 余程強力な毒だったのだろう、その表情は驚愕に満ちていた。
「神奈子様と諏訪子様の加護でしょうか――分かりませんが、私の中の毒はもう、消え去りました」
 瞳を閉じながら告げた早苗は、言葉の後にゆっくりと瞳を開いた。
「リグルさん、と言いましたか。人間はそのような胸糞悪くなるクズばかりではありませんよ」
 神妙な面持ちで告げる早苗とは逆に、リグルの表情は焦燥が増すばかりだった。
「じゃああなたがそれを証明してみせてよ!!人間が汚い存在でないってことを!!」
 額に汗を浮かばせながらリグルは喚く。そして一匹の掌ぐらいの大きさの蟲を呼び出した。
 その蟲は……何とも言えない、何と表せばいいのか分からない、蝿を巨大化して更に醜くしたような……?蟲であった。
 蟲はリグルの呼びかけに反応して、一直線に早苗へと飛んでいった。
「……さな、え……っ!」
 魔理沙は叫んだが、早苗はその場から一歩も動くことなく、受け入れるかのように両手を広げた。
 そして蟲を懐へ導き、静かに蟲を撫でた。
 早苗の表情は嫌悪一つなく、安らかな表情で蟲を見ていた。
 それを見たリグルは戸惑ったように硬直していた。
「なんで……?大概の人間は蟲を恐れて逃げ出すのに……」
「私は、逃げませんよ。あなたを受け入れます」
 安らかな表情のままリグルを見て、そのまま微笑んだ。
「嘘……嘘よ……私を騙すための……ううぅ……うああ……あああぁああ……」
 リグルは涙を流し、嗚咽を漏らしながら、やがて大空を見上げて泣き出した。
 恐らくリグルは自分を見失っていたのだろう。どうすればいいのかを考え続け、やがて考えるのをやめてしまったのだ。
 彼女は異性と触れあい、純粋になったのだ。掴んだ幸せは偽りであったが……。
 早苗が受け入れたことにより、また別の幸せを再確認出来たのだ。
 これから彼女は、もっと強く生きていくことだろう。
 どれくらい泣いていただろうか。
 早苗と魔理沙はそれを見守り、やがてリグルは泣き止んだ。
 そして毒を中和出来る蟲を魔理沙に使った。魔理沙は立ち上がり、早苗と並んでリグルを向き直した。
「……ありがとう。私は、道を間違えるところだった」
 零れた涙の痕を擦りながら、リグルは笑顔になって告げた。
 その笑顔を見た二人は、惹かれるようにつられて笑顔になった。
 これで、彼女はもう大丈夫だ。
「……戻っておいで」
 リグルは早苗の掌にいる蟲を呼び戻した。





 蟲は、消滅した。
 リグルに呼び戻され、早苗の懐から飛んでくる途中に、突然消滅したのだった。
 リグルはもちろん、魔理沙も、早苗も、この場にいる全員がそれには驚愕した。
 消滅する瞬間をしっかりと見ていたリグルが、再び涙を流しながら歯を食いしばり、叫んだ。
「……やっぱり、あなたもあいつと同じだったんだ……なんで……どうしてェッ!!!」
「ち、ちが……!!私は……」
「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!もう信用してやるもんか!!どうして私だけこんな目に合うんだ!!」
 早苗はリグルに一歩近寄るが、リグルは頭を振りながら喚いた。
「殺してやる!殺してやる!!絶対に殺してやる!!!」
 喉も潰さんといった悲痛な叫び声だった。
 今にも大量の蟲を放出せんとしているリグルの背後に、
 スキマが、
 そして、
 聞こえた。




「――人間を皆殺しなんてした暁には、私があなたを殺すわよ」




 スキマから現れた紫は、何をしたのか喚くリグルを一瞬にして気絶させ、リグルの腹部を片手に持った。
八雲紫……またあなたですか!また私に用でもあるんですか?」
 早苗が紫に言葉を飛ばした。早苗と魔理沙は反射的に身構えていた。それを見た紫が嘲笑するように見下した。
「用なんてもの毛頭ない。あなたは私に殺される。それだけなのよ」
 そう冷たい瞳で言葉に放った紫に、魔理沙は疑問を投げかけた。
「紫!お前一体何してんだよ!何がしたいんだ!」
 その声に反応して、紫は魔理沙を見た。しかし、話すことなど何もない、と言った様子ですぐに視線を逸らした。それを見た魔理沙は小さく舌打ちした。
 こいつは一体何を考えている……?早苗が何をしたというのだ……?
「でも……今日はあなたじゃないの。この子に用があってね」
 そう言った紫は顎でリグルを指し示した。
「リグルに……?」
「そうねぇ……この子は使えるわ
 それを聞いた早苗は大きく眼を見開き、反射的に叫んでいた。
「使える……!?まさかあなたは……彼女と同じことをリグルさんに……!!」
 早苗?何を知っているんだ……?
 疑問の表情の魔理沙と険しい表情で喚く早苗。そのどちらをも無視して紫はスキマの中へと入っていった。
 そしてすぐに、声が響いた。
 ――良いものを見せてあげるわ。
 良いもの……?何をするつもりだ。
 その声の後、魔理沙と早苗は周囲を見回した。すると、草むらから人影二つが現れた。
 瞬間に、二人は息を呑んだ。
「加奈ちゃんっ!」
 そう、早苗は叫んだ。
 現れたのは、霊夢と加奈だった。霊夢は右腕に加奈を抱きかかえていた。
「早苗ちゃん……っ!」
 息を切らしながら、加奈は早苗を見た。
 その加奈の隣で、霊夢はもう片方の左手に札を持った。それを見た魔理沙は、追いかける直前の嫌な予感が鮮明に蘇るのを感じた。
「やめろ霊夢……それは……それだけは……やめろ!!!」
 無意識に身体が動いていた。声を荒げながら霊夢へと走るが、霊夢は左手の札を使って術符を発動した。
 左手に収まっていた札が小さな光へと変わり、
 霊夢は、
 その左手を、
 加奈の首へと――………







 早苗の足元に、『もの』が落ちた。
「……加奈ちゃん?」
 早苗は視点をゆっくりと『もの』に変えて小さく言葉を漏らす。
 魔理沙は、走るのやめて硬直していた。その表情は、驚愕に満ちていた。
 霊夢の片腕に抱かれている加奈から、首が落ちた。霊夢は即座に腕から加奈だった何かを手放し、地面へと放り投げた。
「あ…………ぁ………え?…………」
 背後から物音が聞こえた魔理沙は早苗のいる背後を振り向いた。
 早苗は脱力したように膝をついて、大きく見開かれた瞳は虚ろだった。涙すらも浮かべず、ただただ無言で『もの』を眺めていた。
 それを見た魔理沙が激昂したのは、刹那的だった。
 魔理沙は箒に跨り、彗星「ブレイジングスター」を発動して、そのまま霊夢へと突撃した。
「何やってんだよ……何やってんだよッ!!お前はぁっ!!!!」
 先より黒さを増したような気がする淀んだ大空へと霊夢とともに飛翔した魔理沙は、心底からの怒号を放った。
 呆然と絶望している早苗ただ独りを置いて。







To be continued…

あとがき
今回は凄く長くなりました。いつもの二倍以上?常にこれぐらいいければいいのだけれど。
書きたかった展開の一つが消化出来たので少し満足ですw
それではまたいつか。早めの更新を心がけます……