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毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 27話「西行妖」

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***-幽々子-****

 一瞬だけの痛み。それとともに、重要なことが私の脳内に流れ込んだ。西行妖に封印されているのは、生前の私自身の身体。私は自分自身を復活させようとしていたのか。通りでどれだけ頑張ろうとも封印が解けないはずだ……。そしてもう一つ、私は危険な事に気付かされた。


 西行妖の封印が解けた。私は、もうすぐ消えてしまう。


 しかし、何故?封印はどうしようと解けないはずだ。誰かが西行妖を満開にすること以外の封印の解き方を見つけたのだろうか?紫……ではない、と信じたいけれど。いや……考えていても仕方が無い。
 これが運命ならば、あるがまま受け入れよう。妖夢には……内緒にしておきたい、その為には……。





 数日前。私は紫を白玉楼へと誘った。部屋は同じく和室で、向かい合うように座っていた。
「紫……あなた。最近、何かしているんじゃない?」
 私は静かに、だがどこか強い声で告げた。その声に紫は反応することもなく、ただ一言告げた。
「気付くのが遅かったんじゃない?私は何年も前から調べていたけれど」
 真顔で淡々と台詞を吐き続ける紫に少し引きながらも更に問う。
「何年も前から?一体――」
東風谷早苗を殺すのよ」
 しかし、その言葉は力強い言葉により遮られてしまった。唐突に不穏な言葉を聞かされた私は戸惑い、思わず聞き返してしまった。
「殺すって……呆れた。そこまでする必要がどこにあるのかしら」
「……あなたには関係ないのよ。話はこれで終わりにしましょう」
 それだけ言うと紫はスキマを開いてどこかへと立ち去ってしまった。




***-妖夢-****

 一時間後。私は突然幽々子様に中庭に呼び出された。
「何ですか?唐突に」
 中庭へ行くと、幽々子様はこちらに背を向けて西行妖を見ていた。片手には刀が握られている。もしや剣術の稽古でもするのだろうか?それはそれでいいのだが……何で今?
 声をかけた私に気がついた幽々子様はこちらを向いて微笑んだ。
妖夢、私ね。突然だけどしばらく白玉楼を留守にすることになったの。だから、出かける前に稽古を、ね?」
 私はそれを聞いて大きく驚愕した。留守にする!?そんなことして、色んな管理はどうするというのだ!?まさか、私に任せるってこと……?そんなあ!というか、どこへ行くんだ?何をしに?
 様々な疑問が頭を駆け巡り混乱しかける。
「色々な話は後にして、さあ、始めましょう」
 そう幽々子様に言われてはっとなり、白楼剣と楼観剣を構えた。もちろん、本当に斬る訳ではなく、寸止めだ。
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 手始めに、深く腰を落としてから素早く間合いを詰めた。そしてから背後に回りこみ、二連撃切り裂き――と行きたいところだが出来ないので体当たりで大きく突き飛ばした。もちろん、これだけで終わるはずがない――はずだった。吹き飛ばされて草に叩きつけられた幽々子様は少しだけ哀しい表情をした後ゆっくりと立ち上がると、たはは、と笑いながら両手を上げた。
「まいったわ。やっぱり妖夢は強いわね~」
 ……え?もう、終わり……?始まったばかりじゃないか。私が呆れ立ち尽くしていると幽々子様は私の気持ちを察したのか理由を告げてくれた。
「もう時間が来ちゃったみたいなの。ごめんね。もう……行かなくちゃ……」
 幽々子様の表情が曇った。幽々子様のこんな顔、初めて見るかもしれない……。……それなら。
「……そんな顔しないで下さい、幽々子様。幽々子様が留守の間中ずっと、この白玉楼を守る事を誓います。いつ戻ってきても安心出来るように、いつまでも、永遠に……」
 それなら、庭師として、幽々子様に慕う者として、最大限の。精一杯の出来る事をやろう。それを聞いた幽々子様は、瞳に涙を浮かべなから微笑んだ。
「ありがとう、妖夢……」
 幽々子様は、ゆっくりと歩いて、私の横を通りすぎて、白玉楼の入口から出て行った。
 ………………。これからは、私が全部担うんだ。どれだけ忙しくなるかは分からないけれど、主人が安心して帰って来られる場所をいつまでも保ち続けよう。そう覚悟を決めると、西行妖が大きく輝いた。その方向を見ると、私は大きく眼を見開くことになった。
「西行妖が……満開になった……!!」
 何と美しいものか……!これは幽々子様に報告しなければ!私は白玉楼の入口へと駆け、辿り着いたがその先にはもう誰もいなかった。余程急いでいたのだろうか……もったいない……。やれやれと私は白玉楼の中へ戻っていったが、そこで違和感に気付いた。
「そういえば……幽々子様は、どこへ行ったんだろう?」
 私が真実を知るまではそう時間はかからなかった。



*******

 幽々子が白玉楼から出てきた。恐らく妖夢との会話を終えてきたのだろう。
「ごめんなさいね、わざわざ外にまで出てもらってて……」
「別に構いませんよ……それより、よかったんですか?」
 早苗が問いかけると幽々子が切ない表情で静かに頷いた。それを見た早苗はそれ以上何も言わなかった。……しかし、何故幽々子は突然消える事になってしまったのだろうか?自然的な現象で封印が解けたのか、それとも第三者が……いや、別の封印の解き方があるとは考えにくい……。まさか、八雲紫……?いや、何でもかんでも紫に結びつけるのはやめよう。今回は私は無関係だし、第一幽々子と紫は友人同士だ。と、早苗が深い思考の海に潜っていると幽々子が声をかけてきた。
「早苗、このことだけれど、何となく、正体は私達が知ってる存在な気がするの……。悪いけれど、私の代わりに調べてね……」
 私達が知ってる存在、か……。だとすると範囲は広いな……。早苗は再び幽々子の言葉に頷いた。
「……それじゃあ、後はよろしくね、早苗……」
 早苗に向かって幽々子が微笑んだ。すると、辺りが桜色に輝きだす。そのあまりの眩しさに眼を瞑った。次眼を開いた時には、そこに幽々子の姿は無かった。
 今度は白玉楼が輝きだした。西行妖が咲いたのだろう。見てみたい気持ちもあるが……。今は、何となく戻る気にならなかった。もう少し、ここで立ち尽くしていたい。




 桜、光り、消えて行く。大切な者残して。




To be continued…