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毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 22話「愛の想い」

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(続いて魔理沙視点)
 これから早苗の家――守矢神社の上を通り過ぎることになる。今はレース中であるから、『そこ』を確認するのは良くて数秒――この間に何か早苗に伝えられるようなことを見つけられればいいが。
 見えてきた。守矢神社だ。私は夕陽の眩しさに目を細めながら神社の様子をこの眼で確認した。五年後の守矢神社は――予想はしていたが、ひどく寂れた雰囲気になっていた。幻想郷全体で、この守矢神社には入らないことを確認しあっていた――そんなことを守る者なんて少数なのだが、関わりたくないという気持ちが強かったらしく何もされなかった――から、神社を見るのは久しぶりだった。
 私はすぐに箒のスピードを落とさずに神社を横目で見た。やはり最初見た時と同じく、寂れた様子だった――ただ一つの壁に出来た穴を見つけるまでは。
 見ると、他の所にも穴が多数。どう考えても壊されていた。どこぞの馬鹿が守矢神社を荒らしまわったのか――?そんな推測をする暇も無く、私とぬえは守矢神社を通り過ぎた。




 それ以降、私とぬえは様々な仕掛けに遭遇するも乗り越えた。ネタ切れなんです。ごめんなさい。




「ここからは一直線よ。ラストスパートってとこね!」
 ぬえがそう言うと、以前よりも飛ぶスピードを上げた。すぐに私も負けじと箒のスピードを上げた。この先は魔法の森――香霖堂。霖太郎や早苗は無事か?そして、香霖……待ってろよ。今すぐに助けてやるからな。
 私自身の覚悟が強まり、箒自体のスピードが増した気がした。ぬえと私はゴールめがけてひたすらに飛ばす。それは一瞬のようで、長い時間だったかもしれない。







 私が勝った。







 ゴールした私は、着地するとうつぶせに倒れた。ちょっと――無理をしすぎたかもしれない。異常をきたしていなければいいのだが――。
 疲れ果てて、しばらくその状態でいるとぬえが話しかけてきた。
「さっすがぁ!やるじゃない!!――それじゃ、霖之助の記憶を元に戻してあげるわ」
 その言葉を聞いてすぐに、私は香霖の所へと走り出した。

*******


 魔理沙が帰ってきたようだ。結果は――勝利したらしい。良かった……。ドタドタ、と音がしてから、激しく扉を開く音がした。魔理沙がやってきたのだ。魔理沙はベッドに横たわる霖之助に近づくと、霖之助に声をかけた。
「香霖!香霖!大丈夫か!?」
 その魔理沙の呼びかけは、数分続いた。そしてその後、霖之助はゆっくりと目を開いた。
「……!!香霖!良かった!」
 まだ横たわったままだが目覚めただけでも嬉しいらしく、魔理沙霖之助を抱きしめようとした。
 だが、それは次の霖之助の発した言葉で遮られた。
「――記憶」
 魔理沙が抱きしめようとした体勢のまま硬直したのが見てとれた。記憶……?どういうことだ。霖之助の記憶は元に戻ったのではないか。霖之助は、記憶記憶記憶、と不規則に呟きだした。魔理沙と早苗はその様子に困惑していると、背後にある魔理沙が入ってきた扉から声がした。振り返ると、ぬえが扉に寄りかかって笑みを浮かべていた。
「正体不明を解除したのは「記憶」という言葉だけ――全て元に戻すとは言っていないわよ?」
「ふざけるな……」
 魔理沙を見ると、激しく激昂しているようだった。ぬえは何か言いかけていたが魔理沙はもう聞く気にならないようだ。
「ふざけるな!!ここまでやって、しかも勝ったのに!お前は嘘をついていたのかよ!!?」
 立て続けに魔理沙がそう言う。ぬえはまだ笑みを浮かべたままだ。
「お前――!!」
 魔理沙はぬえの胸倉を掴むと、窓へと放り投げた。窓が割れる音がするとともに、ぬえは香霖堂の外へ放り出された。続けて魔理沙がそこから飛び出すと、ぬえに向けてミニ八卦炉を構えた。
「くらえ!マスタースパーク!!」
 魔理沙がマスタースパークを放った。それがぬえへと向かっていく。このままいけば直撃だ。ただでは済まない。
「――調子に乗るなっ!」
 だが、ぬえはそれをいとも簡単にかき消した。そしてすぐにぬえは力強い弾幕を放った。弾幕魔理沙へと向かっていく。魔理沙は反動で身動きが取れない!早苗は魔理沙を助けようと窓から飛び出そうとした――が、何者かに背後から肩を掴まれて部屋の中へと突き戻された。それをやったのは――霖之助だった。
 霖之助魔理沙のことを突き飛ばした。それに魔理沙は驚愕し、悲鳴に近い声を上げた。
「香霖?!記憶が戻――!?」
 霖之助魔理沙に向かって微笑むと、弾幕を全て受け止めた。
「香霖!香霖!!待ってくれ!!香霖――!!!!」







 周囲は、眩しい光に包まれた。








 光が収まると、そこに霖之助の姿は無かった。何も無かったのだ。霖之助は――死んだ。
「あ……あ……ああ……」
 それを見た早苗は絶句した。また、魔理沙も然りであった。だが、悲しみの重さは――魔理沙の方が大きい。ぬえは、生命を――形すらも奪ってしまうほどの本気の弾幕を放ったのか!?何故そこまで出す必要があった!?
 早苗はぬえの方を見た。こんな事になっていても尚、嗤っているのだろうか――と思っていたが、ぬえは予想とは裏腹の様子だった。まるで信じられない物を見たかのような表情を浮かべ、全身が小刻みに震えていた。
「ち、が……う……私は、そんなに強い弾幕を放っていない……軽くやっただけ……なのに……奪うつもりなんて……最初から無かったのに……」
 ぬえは自分に言い聞かせるように呟き、そしてどこかへ飛んでいってしまった。
「あ――魔理沙さん!ぬえさんを捕まえてきます!」
 それだけ告げて、早苗は香霖堂を飛び出した。




 辺り一帯を全力を尽くして探し回ったが、ぬえが見つかることはなかった。気持ちが晴れぬまま渋々香霖堂へ戻った早苗は、入口の扉を開いた。
 見ると、いつも霖之助が座っていた場所に魔理沙が座っていた。魔理沙の膝の上には霖太郎。
魔理沙さん……」
 早苗は声をかけると、魔理沙が早苗の方を向いた。
「私……香霖のことで我を忘れてた……。あんなことしなければ香霖は死なずにいたかもしれないのに……はは、情けないな。さっき早苗に『自分勝手な行動は駄目だ』って言ったばっかりなのに――でも、いい例になっただろ?」
 魔理沙が自虐的な笑みを浮かべながら言う。普段の元気を取り繕うとしていたが、明らかに声は震えていた。
「いい例だなんて……そんな風に見ることなんか出来ませんよ」
「それもそう、だな……」
 静寂が出来た。それはとても重苦しく、切なかった。すると、魔理沙がゆっくりと、自らの腹部をさすりながら静かに喋り始めた。
「私のお腹にはな……もう一人の子供が出来ていたんだ」
 早苗はそれを聞いて驚愕した。
「そんな……そんな大事なこと、今までどうして黙っていたんですか?」
「皆を驚かせて、喜ばせようとしたんだ……それでも、香霖には伝えられなかったけれど……」
 早苗は何も言えなかった。魔理沙は一旦深呼吸をした後、話を切り替えた。
「早苗……私はこれから、この店を経営していこうと思うんだ。それだけじゃない。香霖がやりたかったこと、やっていたこと。全部私がやるんだ。私が、香霖の代わりになるんだ……っ」
 魔理沙の声は震えを増していくばかりだ。涙を堪えて耐えられないのだろう。
「行ってくれ、早苗。……お前にしか出来ない、やるべきことがあるだろう」
 それを聞いて、早苗は頷いていた。今は一人にしてあげるべきだ――。早苗は振り返り、扉に手をかけた。
「早苗。――香霖と霖太郎、守ってくれて……ありがとな」
 その言葉を聞いた瞬間、早苗は頬に涙が流れたのを感じた。
 どうしてこんな事に――……





 早苗が出て行った後、部屋を眺めた。香霖の分まで。そうだ。やるんだ、私は。そう心の中で意気込んでいると、膝の上にいる霖太郎が話しかけてきた。
「ねー、おかーさん。おとーさんは?」
 ―――――!!!
 霖太郎のそれはひたすら無邪気で、その無邪気さが仇となりとうとう堪えきれなくなった涙が溢れ、それからしばらく止むことは無かった。
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 愛する人の、全て私が引き継ぎこれからもずっと忘れずにいようあの人のこと――







あとがき
四章終わりです!く~疲れました!例の如く最後の一文は恋色マスタースパークのサビと合わせて歌えます。
ええ、やっぱり鬱なんです。ギャグで行くのは無理です。シリアスじゃないと詰みます。
そんなことはさておき、さてこの物語もちょうど中盤辺りかな…。残り三章くらいにしたいと思ってます。
それでは、また次回。