毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 21話「飛沫と夕焼け」

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(引き続き魔理沙視点)
 異変に気付いた私は辺りを見回し、真下にある湖を見た。そこから無数の水玉――大きさは私自身と同じくらいのようだ――が吹き出してくるとともに人影が二つ。その大きな水玉は弾け、私とぬえを含めた辺り一体をずぶ濡れにさせた。虹が綺麗だ。
「これはっ…ムラサね!」
 ぬえがそう叫ぶと、人影が露わになった。村紗――村紗水蜜と小傘だった。恐らくあの後すぐに村紗が小傘を助け、次の仕掛けを作動させたのだろう。それにしても速い。
 それと――これは作者の素朴な疑問なのだが、何故村紗は「村紗」で呼び方が定着しているのだろうか。水蜜でもいいじゃないか。こっちのほう可愛いじゃないか!今ゲームで確認したら名前出た時に「ムラサ船長」って書いてあったよ!そりゃあこっちのほうが定着するに決まってるじゃないか!!でも何か可哀想じゃないか!!何でこんなに名前がかわいいのに苗字のほうが浸透してるんだ!!水蜜って名前可愛いだろ!!可愛いじゃん!!可愛
 姿を現して早々、小傘がドヤ顔でこちらを指差してきた。
「ふふん!今度はさっきみたいにはいかないわよ!」
 今度はタンクのような形状の箱を持ってそれに突き刺さったチューブをこちらに向けてきた。
「くらっちゃえ~!!」
「あっ小傘!」
 途中で村紗が止めに入ろうとしたが、小傘はそれを聞かずにチューブから液体のりを放った。私とぬえは抵抗せずにそれを受け止めた。そしてすぐに私とぬえにかかったのりは身体からはがれ、落ちていった。
「あ、あれ?なんで……」
 首を傾げる小傘に村紗が呆れながら助け舟を出した。
「小傘……私たちが出てきたときに目くらましに水玉を弾けさせたでしょう?その時に二人の身体は濡れているからのりがくっつく訳がないのよ」
 それを聞くとともに小傘の顔が蒼白になっていった。
「あっ……やっちゃった……」
 ずーん、とあからさまに小傘が暗くなる。まあ、分かっていたといわれれば分かっていたのだが。
「……なんだか拍子抜けしちゃったわね。進んじゃっていいわよ」
 村紗にそう言われた。いや、仮にも仕掛け人がそんなことを言っていいのか……。とかなんとか考えているうちにぬえが滝を上り始めた。
「あっ!おい、待てよぬえ!」
「ふふ、ボーっとしてるほうが悪いのよ!」
 私は箒で滝を上り、ぬえを追いかけた。









 滝を上りきると、そこは夕焼けだった。そう、あの異変の時もここを上ったら夕焼けになっていた。美しい景色に魅了されたものさ。そういえば、あの時の異変は早苗たちのだったか――今思えば、本当にトラブルメーカーだよな。ふ、と箒を飛ばしながら私は笑みが漏れていることに気付いた。駄目だ。今は香霖のことだけに集中しよう。
 すると、風を切る音が聞こえた。その瞬間には目の前には射命丸文がいた。
あやややや。あなたたちそんなに急いでこの先に何の用があるっていうのですか?」
 文が困った表情を浮かべながら笑った。ちなみに今も箒を飛ばしている。余裕で追いつく上に普通に会話するのか――さすがは幻想郷一の速さ、というところか。
「悪いな文。今はちょっと大事なことをしている最中なんだ、話している暇は無い。大丈夫だ、ただ駆け抜けるだけだから何もしない」
「……ふむ。ただならぬ状況のようですね。――しかし、ここまでくる道中にかなりの被害をもたらしているようですが?」
 文がメモ帳を取り出して開き、それを見てペンの頭を唇にあてがいながら言った。それに対して私はさっきの二人を思い出して即答した。
「それなら命蓮寺の連中が責任取るってよ!それらは全部そっちにしてくれ!」
 その言葉にぬえは驚愕し、怒りを露わにしていたが無視した。それを聞いた文は長考の末に納得したようで、メモ帳になにやら書いた。
「分かりました。今回は見逃すことにしましょう。しかし、あまり長居をすると容赦はしませんよ?それでは」
 メモ帳をパタン、と閉じながら文は言った。私はそれに――ぬえの意見はスルーして勝手に――力強く頷いた。再び風を切る音が聞こえたと思うと既に文はそこにいなかった。本当に速いな……憧れてしまう。さあ、レースに集中しよう。この先は守矢神社か――何か見つけたら早苗に報告してやらないとな――。






To be continued…