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毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 19話「ゲーム」

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「お前はっ……ぬえか!香霖に何をしたんだ!」
 人形のように倒れ、硬直している霖之助を抱きかかえながらぬえを睨んで魔理沙が叫んだ。ぬえは、へらへらとした様子だった。
「何をそんなに激昂しているのよ。心配しなくても、ただ記憶を正体不明にしただけ……生きているわ、殺してない」
「同じことだろ!!今すぐ元に戻せ!!」
 魔理沙が床をどん、と力強く叩いている。これまでに起こった二つの出来事から――早苗の話のみで直に見たわけではないのだが――現在の事態を重く見ているようだ。
「いいわよ。ただしゲームをクリアしたらね。暇なのよ、付き合いなさい。大丈夫、ただの暇つぶしだから安全は保証してあげるわ」
 ぬえがおちゃらけた様子のまま言葉を発していた。そうか、ぬえはこれまでに起こった出来事――恐らく早苗自身に起こったことも――知らないのだろう。何か知っていたらそもそもここには訪れないはずだ。わざわざ関わりに行きたくない、と思うはずだからだ。つまり……ぬえは本当に暇つぶしでこういうことをしているのだ。憶測にすぎないが、そう考えると少しは気が楽だ。早苗はしゃがんで、警戒している様子の魔理沙に声をかけた。
魔理沙さん。ぬえさんは悪気は無いようですよ。本当に暇つぶしのようです。……ここは、大人しく従っていたほうがいいと思いますよ」
 その言葉を聞いた魔理沙は、まだ疑念が晴れないといった感じだがどうやら納得してくれたようだ。霖之助をゆっくりと横たわらせて魔理沙は立ち上がると、きっ、とぬえを睨んだ。
「……私は何をすればいいんだ。何をさせる気だ」
「レースよ。幻想郷を外枠に沿って空を駆け抜けて、その道中にある障害物を乗り越えた上で先にゴールした方の勝ちよ」
 ぬえが立ち上がった魔理沙に近寄って顔を近づけながら言った。至極単純なものだった。良かった……今度は緊迫したような気持ちで見ている必要は無さそうだ……って、いやいやいや。私にだってやるべきことはあるだろう。
「ちょっと待ってください。私は手助けしてもいいんですか?」
 ぬえは身体を少し仰け反らせてさかさまの顔を早苗に向けてきた。
「あー?あなたはそもそもお呼びじゃないのよ。そこらへんで見てれば?」
 お呼びじゃない、って……まあ、事情を知らないんじゃ仕方ないか……。
「じゃあ、早速始めましょ。あ、乗り物は箒で十分よ」
 ぬえが再びそう声を出して、早苗たちは外へ出た。



 外へ出ると、少しだけ雲が立ち込めていた。
「ここからスタートで、あそこを一直線にすすめば後は目印が何とかしてくれるわ」
「ぬえさん?ちょっと二つほど疑問をいいですか?」
 早苗の突っ込み混じりの疑問の声にぬえは首を傾げた。
「ぬえさんのそのUFOっぽいものはなんですか?」
 そう、これから始まるレースで使うのか知らないがぬえはUFO?みたいな物体を用意していたのだ。
「もちろん、これでレースをするのよ」
 やっぱりか!早苗は思わず呆れた声を漏らした。
「あのねえ、こういうのは気分が大事なのよ。き・ぶ・ん」
 人差し指を立てて揺らしながらぬえはそう言った。しかしこれはどこに掴まるのだろうか。まさか円盤の上の北半球にしがみつくのか?……想像すると凄くシュールなのだが。
「それで、もう一つの疑問ってのは?」
 しょうもないことに深く考えに入っていた早苗は、ぬえのその言葉にはっと我に返った。
「そ、そうでした。ぬえさんの言う障害物とは一体誰が用意したんですか?まさかぬえさんが用意したんじゃないですよね?」
「違う違う。そんなんじゃつまらないわ。小傘の奴に頼んでおいたわ。きっと驚かす能力をうまく使ってくれるはずだよ(棒)」
 小傘――例の唐傘お化けか。あの妖怪に任せてもいいのだろうか――。
「おいっ!!早くしろよ!!」
 二人の談笑にイラついたらしく魔理沙が怒鳴った。それを聞いたぬえは話を持ち直した。
基本的に時間は無制限。相手同士を邪魔するのは無しよ。……こんなところかしら。さあ、始めましょう」
 ぬえは走ってUFOに飛び乗って北半球にしがみついた。あ、やっぱりそう乗るんだそれ……。それを眺めていると、横から魔理沙がやってきた。
「早苗……香霖、任せたぜ」
 静かにそう言われたので、つい早苗は顔を引き締め、強く頷いた。それを確認した魔理沙は箒に飛び乗って、スタート地点についた。


「じゃ、行くわよ……ゲームスタート!」






To be continued…