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毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 11話「残響」

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***-レミリア-****

 最近、咲夜の成長が著しい気がする。五年前くらいはそんなに目立った成長は見られなかったのに。いつだったか何年も前にパチェに言われたことがある。
「レミィ。咲夜にはあまり愛情を注がないほうがいいんじゃないかしら?」
 そう言われて下唇をかみ締めた。いや、分かっていたことなのだ。吸血鬼と人間は所詮相容れることなど出来ない――増して咲夜は時を止める能力だ。並大抵の人間よりも老化が微かに早い。それでも、私は咲夜が好きなんだ。好きで好きでしょうがないんだ。
 だから私は、かつて永夜異変の時に咲夜に問いただした。――咲夜も不老不死になってみない?そうすればずっと一緒にいられるよ――と。吸血鬼になれば良いのだ。私にはその力がある。
 しかし咲夜はかぶりを振ってこう言った。――私は一生死ぬ人間ですよ。大丈夫、生きている間は一緒にいますから――と。人間の運命にそのまま身を任せると言ったのだ。咲夜がそういうのなら…と、私は尊重するつもりだった。
 でも、成長していく咲夜を見て私はその時を恐れてしまった。咲夜のことを何度も見るたびに涙が溢れそうになった。しかし精一杯堪えた。ここでそんなことを口に出せば咲夜だって同じような気持ちになるかもしれない――それとも、何か優しい言葉をかけてくれるの?


 ある日の夜、館に守矢とかいう神社の巫女――早苗だったか――がやってきた。
 守矢の事情は五年前の事件で把握していた。五年前の夜、守矢神社から強い光を目撃した鴉天狗は、すぐに神社に訪れその様子のおかしさに違和感を感じたという。中へ入ってみると、赤ん坊の早苗が横たわっているだけで、あとの二人の神様はどこにもいなかったらしい。すぐさま記事にされたそれは、次に『何かしらの理由で幼児化してしまった早苗』を誰か受け持つか。と言った話になった。
 それが決まるのに時間はかからなかった。香霖堂の店主が受け持つことになったようだ。なんでも――僕ら二人の関係のお礼をしたいから――らしい。私にはよくわからなかった。霊夢は、
「これは異変であるような気がするけど、勘がまだ解決できる時ではない、って言ってるわ。実害は無いみたいだし、大丈夫でしょ。ただ一つ、これも勘なんだけど…幼児化はさほど問題にはならないかもしれないわね」
 と言った。確かに、その五年後にこうやって復活しているのだから、問題ではなかった。何故かはわからないが、それは早苗自身が分かっているのであろう。早苗は信仰を求めてやってきたのだった。二人の神様を復活させるためだ。私はそれを強く否定した。だって、関係ないもん。
 咲夜が部屋へやってきて、紅茶を置いてくれた。私はまた堪え、震えた。
 「用がで、出来たら!…もう一度、呼ぶから…部屋でゆっくりしていなさい」
 ああ、また冷たくしてしまった。もう、覚悟を決めなくては。早苗を帰したら、咲夜に謝ろう。そして、最期の時まで楽しく過ごそう。

 そう決めたのに。
 私の妹はそれを冷たく引き裂いた。フランドールが咲夜を殺した。咲夜が倒れている。私は駆け寄り咲夜を介抱した。
 フランドールのことは好きだった。大好きだった。これまで幽閉したのも妹の為だった。だけどそれは間違いで、もっと外で出してあげるべきだったのかもしれないと、最近思い始めた。霊夢魔理沙のおかげだ。もっとちゃんと育てるべきだった…。


 やだ!やだよ…!まだ、生きられるよ…死なないで、咲夜…ッ…。咲夜!咲夜!咲夜………!!!
 掠れた声で咲夜はこう言った。
「お嬢様…一つだけ、お願いがあり…ます…フラン、ドールお、嬢様の…ことを――殺してください。
 聞き取りにくかったが、恐らくそう言ったのだ。それを最期に、咲夜は動かなくなった。


 ――ああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁあああああ!!!!!!!!!!
 許さない。もう妹だとは思わない。フランドールは、殺すべき存在だ。
 許さない。
 ゆるさない。
 ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない殺してやる殺してやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやる
 それだけが思考を染めきった。私はフランドールに斬りかかって、それ以降は覚えていない。





 私はフランドールと相討ちになって、共に倒れた。




*******

***-咲夜-****

 お嬢様は、私を嫌いになってしまったのか?
 そんな想いが最近毎日心の中を漂い続けている。そんなことはない。お嬢様は私のことが大好きなんだ――そう信じられれば良かったのに。
 ある時、早苗がやってきた。そう…霊夢の勘は当たったのね。さすがだわ。早苗はこれから神様を元に戻すために信仰を集めなければならない。彼女も大変なのだ――。私だって、お嬢様とのギクシャクを元に戻すんだ。頑張ろう!
 その後紅茶を持っていったら、お嬢様に冷たくあしらわれた。五年前に比べてお嬢様は私を呼んだり、話しかけることが極端に少なくなってしまった。少しでも話そうとすがったが、お嬢様はあっけなくそれを一蹴した。少し震えているのはどうしてなのですか?嘲笑を堪えているのですか?そんなはずないのに――少しばかり卑屈になっていたようだった。
 部屋を出ると、フランドールお嬢様に話しかけられた。フランドールお嬢様のお部屋へと移動をし、お話を聞くことにした。フランドールお嬢様は、レミリアお嬢様と仲良くなりたい。ただそれだけを願っていた。それなら、私は邪魔ものなのではないのか?
「咲夜、お姉さまは咲夜にいなくなってほしいなんて思ってないはずよ。ありえない。あっちゃいけないのよ」
 フランドールお嬢様がそう言う。私だってそう信じたかった。でも、もう考える必要なんかないんだ。

 私――邪魔者は自殺して、レミリアお嬢様とフランドールお嬢様の仲を良くしよう。

 すぐさま自前のナイフを取り出し、全身を斬りつけた。それを見たフランドールお嬢様は大きく驚愕して、止めようとした。
「来ないでください!!これは、あなた方お二人のお嬢様の為なのです…!」
 私の言葉を聞いたフランドールお嬢様は、その場に立ち尽くした。それを確認した私は、壁に横たわって、遺書を遺そうとした。しかし、身体が動かない。ああ――さすがに早とちりしちゃったかな…私みたいな邪魔者が死ぬなんて、いつでも良かったのに――。ならば、せめて言葉で伝えよう。私は力を振り絞って弾幕を出し、それを壁にぶつけて轟音を鳴らした。すぐにレミリアお嬢様たちがやってきた。
 レミリアお嬢様は私を介抱してくださった。その間、念願ともいえるお嬢様とのまともな会話をようやくできた。それだけでもう満足だった。
 最期に、一つだけ重要なことを伝えよう…。
「お嬢様…一つだけ、お願いがあり…ます…フラン、ドールお、嬢様の…ことを――愛してください。
 伝わってくれたかな…もう、意識が無くなってきた…。





 あとは――二人お幸せに。レミリアお嬢様、フランドールお嬢様――




*******


 眼が覚めると、紅魔館近くの森だった。レミリアとフランドールの闘いの末の爆発に巻き込まれて早苗は意識を失っていたようだった。
 紅魔館へ再び訪れると、早苗の奇跡は効き目十分だったようで館は無事だった。しかし――主はそこにいない。門の前で立っていると、パチュリーが館へ入るよう促した。早苗は館へ入り、パチュリーの話を聞いた。
「…主無き館となってしまったわ。あの闘いを止められれば良かったのに…被害がこれだけになっただけ、不幸中の幸いと言うのかしら…。あなたのおかげね、ありがとう。レミィなら、お礼として信仰をするかもしれない…だから、あなたの神社の信仰をするわ。私たちは、レミィたちがいなくともこの館で生活し続ける。でも、これからあまり私たちには関わらないでほしいの…お願い」
 その話だけを聞いて、早苗は何も言わずにただ頷いた。信仰は得られたはずなのに、喜びは感じなかった。あんな惨劇を見れば当然であるか――。早苗は、理由こそ聞かされなかったが姉妹同士の殺し合いなど馬鹿げてると思って止めようとしたのだ。しかし足が震えて動けなかった。悔しかった。止めようと、救おうとしたのは早苗のエゴかもしれない。それでも私は……止めたかったんです。
 門の前に出ると、美鈴が門番をしていた。それを見た瞬間、とてつもない威圧感を感じた。言葉は発していなかったが、覚悟が一層強まっているような気がした。これなら、近寄るものもほとんどいないであろう。
 私もまた、目標のために次の場所へと移動しなければ。それにしても、八雲紫…。五年前合った時とは雰囲気がまるで違っていた。昨日は思わず臨戦態勢を取ってしまったが、何か理由があるのだろうか?分からないが、とにかく行こう。
 早苗が歩き始めようと哀れな三人の住んでいた館を背にするが、その瞬間に背後の門番が一言呟いた。
「…フランドールお嬢様の遺品が見つかっていない」
 その言葉に早苗は振り返り、美鈴を見た。その顔は、帽子が影になってよく見えない。
「身体は消滅したけど、遺品――フランドールお嬢様がお使いになっていた物が、綺麗さっぱり無くなっていた。レミリアお嬢様の遺品はあったのに…」
 なんだと…どういうことだ?すると美鈴は顔をあげて、真正面から早苗を見た。微かに涙目になっていたが、泣かないように堪えているように見えた。
「早苗…これは何か裏があるかもしれないわ…気をつけて」
 その美鈴の言葉に早苗はもう一度頷くと、今度こそ館に背を向けて歩き出した。


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 紅の深淵に、堕ちゆくスカーレット。幼い愛が、身を蝕む――……


To be continued…


あとがき
第二章終わりました。次回からは第三章になります。さて、どうなるのか…。
あと、もっとペース早めないと長い時間かかる可能性があるので頑張ります…。
余談ですが上の絵の後にある詩っぽいのは亡き王女の為のセプテットのサビと合わせて歌えます。
それではまたいつか。