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毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】宵闇の狂気 10話「そして私はずっと」(完結)

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意識が朦朧とする。
『私』という存在は、『私だった私』に奪われてしまうのか。
いや――違う。故意ではなかったとはいえ、『私』が奪っていたんだ

私は、あの日の帰りに『私だった私』に体を乗っ取られてしまった。そして意識を失い、しばらくして意識が戻った。目覚めてすぐ、私は友達を食べた。思い出すだけで叫びたくなる。その真実を知ったのは、私がこの体の主導権を無くしてからだった。
主導権を無くした時。それは、何も知らず闇雲にチルノと大ちゃんを探し続けていた最中に霊夢が話しかけてきた後だった。背中を向ける霊夢を掴んだところまでは覚えている。それ以降は、思い出せない。



「ここは、どこなの?!あなたはどうして私と同じ姿をしているの!」
「あなたは、私であり、私ではない。姿形は同じでも、性格は違う」
そして私は、自分の精神の中で目覚めた。目の前に居た『私だった私』に話を聞いていた。でも、何を言っているのかが分からない。
「分からないよ!私の体、返してよ!!」
「返して?それはこっちのセリフよ。あなたがこの体を奪ったんでしょう?」
『私だった私』はそれを言った後、腕を上げて人差し指を私に向けて来た。その指先から出た細い光が、私の頭へと届いた。と思った瞬間、記憶が流れ込んで来た。
「…!!!ううぅうっ…うっ…ぐぅうぅ…!!」
突如急激に流れこむ記憶に、私は悶えながらも、全てを理解した。
無情な殺戮を繰り返していた『私だった私』は封印され、変わりの人格として私が生まれたこと。そして――大切な二人の友達を、食べてしまったこと。
「ああああああッ…ああああ…ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!イヤアアアアアアアァァァアアアアアアァアァッ!!!!!!」
そのショックに程なく私は大きく目を見開いて涙を流し、喉が枯れそうになるほど絶叫した。そんな私を無視して、『私だった私』は一言呟いた。
「まだ封印は完全に解かれてはいないけど――ま、新しく生まれた能力もそこそこ使えるし、何より体を自由に操れるし、問題ないわね。少し経てば能力も充分使えるようになるでしょう。封印されてから今まで溜めてきた力、ようやく出す時が来たようね。…キャハハ、楽しみだわ」
その言葉を聞いた後突如、嫌な感覚に襲われた。何か、黒い何かが自分の中に入り込んでくるような―――。同じ感覚に襲われたようで、『私だった私』も少し驚いた顔をしていた。
「この感覚ッ…ああぁああっ!!」
『私だった私』はそう叫ぶと同時に様子がおかしくなった。疑問に思った私は、何が起こっているのか――聞いてみた。すると歓喜の――狂気ともとれる――表情で告げた。
「幻想郷に存在する人々の心の闇が、私たちに集まってきているのよ!今の状態では少しの時間暴走してしまうかもしれない。でもそれも時間の問題…アハハハハ、力が漲るわ…!!」
それを聞いて、私はまたショックを受けた。このままじゃ――このままじゃ。
そして私の意識は段々と、朦朧してきた――。




ううぅぅぅうっぅぅぅぅう…ううううううぅぅぅ…。
私は、ほとんど同時に二つの衝撃な出来事を知り、苦しんでいる。
もう…諦めるしかないの?
薄れ行く意識の中で、私の中に一つの考えが浮かんだ。それは諦め。もう、どうすることもできない。
ああ――――瞼が重くなってきた―――
瞳を閉じようとした。その瞬間。
ルーミアちゃん!」
突然かけられた声に、私の意識は再び鮮明になった。そこには、二つの光――霊がいた。
それは、チルノと大ちゃん――大妖精だった。
「ふた…りとも…ど…して、ここに…」
私が掠れた声でそう呟くと、チルノが元気いっぱいの声で言った。
ルーミアがあたいたちを食べたから、霊となったあたいたちはここにいられたのよ!…でも、最初はルーミアが怖くなって、一度ルーミアの体から出たわ。どうしようかと迷っていたら、ルーミアが変な黒い闇に覆われて…それで、ルーミアを助けたいと思って戻ってきたの!」
その元気すぎるほどの声に、私は罪悪感を感じて俯いた。視界が歪み、大粒の涙が流れる。
「どうして来てくれたの…私は、二人を殺して、食べちゃったんだよ?それなのに――」
嗚咽を漏らしながら言う私の言葉を遮って、大ちゃんが告げた。
ルーミアちゃん。私たちは、食べられそうになった時一度でもルーミアちゃんを罵ったり恨んでいるようなこと言った?」
それを聞いて、私は静かにかぶりを振った。
「つまりはそういうことなんだよ。私たちは何か理由があるんだ、って信じ続けた。それでも、怖くなって逃げちゃった。――ごめんね」
ぺこり、と大ちゃんが頭が下げてきた。なんで。なんでそんなことを。
「…怒ってないの…?憎んでないの…?それだけじゃないよ…なんで、謝るの…?謝るべきなのは、私のほうなのに…!!」
「もう、ルーミア!同じことを何度も言わせないでよ!あたいたちは友達でしょ?」
「そうだよ。私たちは友達なんだよ。だから、もう苦しまないで――もう一人のルーミアちゃんを、やっつけよう?そしてこれからもずっと、一緒にいよう――」
大ちゃんが手を差し伸べてくる。涙が、更に溢れてくるようだった。私は大きく頷いてその手を掴んだ。
「うん…!」
繋がった手から、光が広がる。それは私の中から、幻想郷全体にまで―――
















――――――そして世界に、光が灯る。













********

翌日、ここは博麗神社。
なんだかよくわからないうちにいつの間にか解決しちゃってたわね。
私――博麗霊夢は、縁側でお茶を啜りながらそんなことを考えていた。
元に戻ったルーミアから全てを聞いた。ルーミアだったルーミアは、あの後どうなったかは分からない。ともあれ、多少の犠牲はあろうとも幻想郷は救われたのだろう。
しかし――ルーミアは、チルノと大妖精がいなくなっても笑顔でいた。二人がいなくなっても、寂しくはないのだろうか?
疑問に思った私は、さっきルーミアに聞いてみた。間を空けることもなく、即答した。
「二人がいなくても寂しくなんてないよ。私のなかにいつでもいるもん!」
眩しいくらいの笑顔をするルーミアの後ろにふと、チルノと大妖精の姿が見えた気がした。









‐the end‐

あとがき
はい終わりました。受験が終わったのでさっさと終わらせました。
どうだったですかね。俺的には希望に満ちた終わりだと思うんですが。
ちなみに前回のあとがきはあえて入れませんでした。いや、あの、雰囲気的に。

なんかネタが浮かんだらまた次回作書きますわ。出来れば鬱無しで。次も東方で書きたいなぁ。
それではまた今度。

追記
そういえば宵闇の狂気でなんかこう、もう一つの終わり的な…another endっつーの?も、書いちゃったりしたので、明日また載せますね。激しい鬱だったりそんなことはなかったりします。