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毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】宵闇の狂気 8話「大切なコト ~ Twilight star」

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――――どれほど戦っていただろうか。
最強の妖怪と謳われた私でも、ここまで苦戦することがあるのか…それとも、能力が衰えてしまったか。いや、それはありえないだろう。それほど、今のルーミアの力は強大なのだ。
夜明けはもうすぐやってくる…そうなれば、今のルーミアの存在がバレてしまう。それだけは絶対に避けなければならない。あくまで自然に――――最初から存在しなかったようにしなければ、少なからず悲しむ者もいるだろう。
しかし――目の前の変わり果てたルーミアは、あまりにも強大な力を得すぎていた。これで続けて封印が解かれてしまえば私は――――いや、もう考える必要もないか。ただ私はルーミアを消し――ルーミア』なんていう宵闇の妖怪はいなかった。最初から、元々宵闇の妖怪などいなかった――と、幻想郷の住民達に認識させるだけでいい。
これも幻想郷のため――どんな犠牲を払ってでも、守り続けてやる。
「…あなたも哀れね。過去からも未来からも、そして現在からも、幻想郷から永遠に消されてしまうもの――私の手によって」
『闇』に向かってそう呟くだけ呟いて、私は攻撃を再開した。限界は近い。でもやるしかない。
その時だった。
「…紫…」
後ろから声が聞こえた。まさか、誰かにバレたの?!夜明け前だから、人は来ないだろうと軽んじていたが――油断していたか。そう思って振り返ったが、私の予想とは裏腹の存在がそこに立っていた。

********


気がつくと、私は気絶していたようだった。
頭が重い。何故、ここで気絶していたのか…。横たわったまま、ゆっくりと記憶を辿っていく。記憶がゆっくりと、だが鮮やかに蘇ってくる。そうか、私は止めに来たんだった。
誰を?
何か、今最も重要なことを忘れてしまっている気がする。思い出せない。その時、すぐ近くで弾幕を放つ音が聞こえた。ゆっくりと首を動かし、その方向へと向いた。そこには、紫と―――大きな闇?が立っていた。根拠はないが、あの大きな闇が今忘れていることな気がする。一体なんだったか…。
それにしても、強大な闇だ。どうしてあそこまで大きくなっているのだろう。そういえば、私が今まで見た中ではああやって闇を操る能力は見たことがないな。いや待てよ…?少し引っかかる。本当に、ないのか?
そう考えたのがきっかけで、どれくらい前だったか――あの妖怪との会話が鮮明に蘇る。




「そーなのかー!」




その口癖が脳裏に響いた瞬間、私はあの宵闇の妖怪を思い出した。しかし、全てを思い出したわけではない。そうか。そうだった。私は紫に記憶を消されそうになっていたのか。そして、気絶をしていた。だとすれば、まだ術は続いている。急いで説得しなければ―――!
私はゆっくりと、だが力強く立ち上がった。
「…紫…」
そう声をかけると、ルーミアと戦闘していた紫は、こっちを振り返った。驚愕した表情なのは、どうしてだろうか。しかしすぐに冷静な表情に変わって、こう言った。
霊夢…目覚めてしまったのね。その調子だと、術により消していた記憶が蘇ったようね?」
すかさず私は紫に詰め寄った。
「そうよ。早く解いて頂戴。また記憶が消えてしまう前に――」
「無駄よ」
私の説得は、紫の一言により遮られた。
「その術は、もう発動してから大分経っている。だから、もう私では止められないわ。そうなるように術を設定したもの」
その言葉を聞いて、今度は私が驚愕した。何で、何でそんな面倒なことを。する必要がないじゃないか。すると、その私の思考を読み取ったかのように、紫が言葉を付け加えた。
「いい?霊夢。迷いは隙を生んでしまうのよ。術をかけてからしばらく経ったあと、もしかしたら迷ってしまうかもしれない。迷ったままなら、大きな過ちを犯してしまいかねない。そういう迷いを断ち切るために、解けないように設定したのよ。後悔してしまうかもしれない。でも、迷って過ちを犯すならくらいなら後悔しても構わない」
そう紫が最後まで言ったとき、私は違和感を感じた。何かおかしい。
私は、一つ思いついたことを口にしてみた。
「そんなこと言って紫…あなた、もう術を解く力も残っていないだけなんじゃないの?」
どう考えても、今の紫は傷だらけだった。それに、最強の妖怪でもあり賢者でもある紫が、術を解くなんて――解けないように設定していたとしても――そんな簡単なことを出来ないはずがないと感じたのだ。
意表を突かれた紫は、ため息をした後、微笑んだ。
「…やっぱり、あなたに嘘は通じないのね」
その微笑みを、同じく微笑みで返して、私は告げた。
「当たり前じゃない。でも、あなたにしては、分かりやすい嘘だったわ」
微笑みを消すと、私はゆっくりと紫の横を通り過ぎ、ルーミアの闇に歩き出した。
「じゃ、記憶が無くなりきる前にルーミアを救いに行ってくるわ」
その言葉を聞いて、紫は私のほうへ振り返った。
「…仕方ないわね。分かったわ。私が闇の中心にいるルーミアまでの突破口を開くわ。でも、私の力はもうあまり残っていないのよ。時間はないから、急いで」
紫は闇に手をかざすと、丸い闇の真ん中に道が開いた。
「わかってるわ、ありがとう。…行ってくるわね」
そして私は闇の中へと入っていった。







To be continued

あとがき
長くしよう長くしようと考えてたら、前回の2倍近くになってました。
紫の「迷いうんぬんかんぬん」のセリフはそんなに深く考えなくていいです。
つーか矛盾ないか不安なんだけど