毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】宵闇の狂気 2話「亡きおてんば恋娘」

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―――幻想郷の結界近くにある神社、博麗神社。
その神社の巫女である博麗霊夢は、いつもの通り和室でお茶を啜っていた。
今日はゆっくりしようか―――いや、しかし何か違和感を感じる――――
すると、霊夢の隣の空間に境目が出来た。出てきたのは、大妖怪である八雲紫だった。
霊夢。異変よ」
その『異変』があまりよくない出来事であることを、紫のその切ない表情が告げていた。
だが、そのことも何となく理解できている。
「分かってるわ。そろそろ来るんじゃないかしら」
紫の表情が、疑問を伝える表情へと変わった。
「え?」
紫がそう言ったところで、何やら縁側から騒がしい足音が聞こえて、
「れ―――――いむ――――!!!!」
という叫びと同時に戸が開かれた。現れたのは魔法使いの霧雨魔理沙だった。
「聞きたいことがあるんだ!!」
霊夢は気だるそうな表情を緩めることなく、一息ついて言った。
「ね?やっぱり魔理沙が来た。」
「ね?って…まるでわかってたかのような言い方じゃない」
紫が呆れた声を出すのを聞いて、霊夢はこう答えた。
「なんか、何かあると魔理沙は騒がしくしてうちに来るのを何度も繰り返している気がして?」
霊夢のその言い方に、紫は少し噴き出した。
「なんで疑問形なのよ」
「いや、なんだか緋想天の時とか、色々な二次創作の話とかで…」
霊夢がそう言ったところで紫は強引に止めた。
「やめなさい!!」

********

全く霊夢は毎回本当に困らせてくれるわね。
紫は内心少し笑うと、後ろで不満そうな声をあげている黒ずくめの少女に気がついた。
「おーい…私は置いてけぼりなのかよ?」
「あらごめんなさい魔理沙。まずは座って話を聞こうじゃない。ほら、紫も」
その霊夢の座ることを促す声に素直に従うと、二人は座布団の上に座った。

そして一旦一段落をつけてから、最初に魔理沙が話し始めた。
「聞いてくれ。なんだか最近チルノや大妖精のことを見かけない気がするんだ」
その言葉に霊夢が呆れたらしい声をあげて言った。
「ただどこかに隠れてるだけじゃないの?」
そういう疑問もあらかじめ分かっていたかのように、魔理沙はすぐに答えた。
「いや、チルノなんかいっつも私に突っかかってくるのに最近は来なくて、疑問に思ったから色んなところにいる妖精を軽く脅して答えさせたんだが、最近チルノだけでなく大妖精の姿も見当たらないらしい。それで、霊夢は何か知ってるかと思って…」
そこまで聞いて、紫は少し驚いた。
わかっていることだがやはり、霊夢の勘はよく当たる――――
「いやいや、脅しちゃ駄目でしょ」
霊夢のもっともな意見に、魔理沙は口を尖らせた。
「そんなこと言われても、あいつらちゃんと教えてくれないんだよ~…そりゃあ、私だって鬼じゃないんだから最初は穏便に話を聞いたんだぜ?」
「勝手に借りた本を返さない奴のどこが鬼じゃないのよ」
そう霊夢に突っ込まれて魔理沙はう、と口をどもらせて、喋るのをやめた。
「悪いけど、そんな話は聞いてな―――」
「それについては私が話すわ」
霊夢の言葉を遮って、紫はそう告げた。
魔理沙霊夢の視線が、紫に集中する。
「あの妖精たちは―――」
この子たちには、少し酷かもしれないけど―――これも『異変』なのだ。話さないわけにはいかない。

「宵闇の妖怪ルーミアに、食べられて死んでしまったわ」

その言葉に、霊夢は少し驚いた程度だったが、魔理沙は過剰な反応を見せた。
魔理沙はどん、と机を叩いた。
「…そんな馬鹿なっ!妖精が死ぬなんてあるはずないだろ!!」
「実際にあったことよ。ルーミアはなんらかの方法で、あの氷精と妖精は、人間に変えられて、死んでしまった。」
魔理沙は、驚きを隠さなかった。
「…そんな…ルーミアにそんな能力が…いや、それ以前にあいつがなんでそんなことを…」
その疑問は当たり前だ。でも、それでも。
「まだ、何も分かっていないのよ。ルーミアの思惑も、それに伴った能力も」
それを聞いた魔理沙は激昂し、怒鳴った。
「それでも…それでもお前幻想郷の大妖怪かよ!?新しく来た奴でもないのに、何で分からないんだ!!お前、力が弱まってきたんじゃないか!?」
恐らく魔理沙は色んな感情が浮かび上がって、混乱してしまっているのだろう。それ故、その感情を無意識に私にぶつけてきた―――。
仕方のないだろう。だが、混乱してるのはこっちも同じだ。
「…私だって動揺しているわよ!こんなこと、初めてなのよ!それを知らずにあなたは…!!」
ああ、こっちも激昂してしまった。いつもは冷静を保っているのに、らしくない――――。
その私の言葉に当然、魔理沙は驚いた。そしてこの状況を見かねた霊夢は、二人の間に割り込んで強引に話を止めた。
「落ち着きなさい、魔理沙。…紫も、らしくないわよ」
わかってる。そんなことはわかっているんだ。でも…。
霊夢の言葉で我に返った魔理沙は、こう告げた。
「…すまない、紫。少し、言いすぎた…」
そして、被っている帽子を少し前に倒して、顔を隠した。
やはり。衝撃的なことを突然伝えられて混乱しているだけなのだ、魔理沙は。それを分かっていたはずなのに、私は…。
「こっちも、ごめんなさい…。こんなことしても意味は無いのに…」

********

紫がこんな言い方をするのは、正直言って初めてみる。それほど今回の出来事は紫にとって予想もできないし、対処もできないことなのだろう。
それと、うちの神社の中で暴れられると困る。だから、私は二人の喧嘩を止めた。
「で?紫は私にどうしてほしいの?」
ひとまず落ち着いた紫は、いつもの調子で喋り始めた。
ルーミアの能力が分からない今、正確な対処法はわからないわ。でもこのまま放置していれば、確実に被害は増えるし、幻想郷も危ない。これがどういう意味か、あなたならわかるわよね?」
紫が私に問いをしてきた。もちろん、わかっている。





ルーミアの存在を消すのね?」
紫は静かに頷いた。




To be continued

あとがき
挿絵を入れるとか言っていたな、あれは嘘だ。

はい、どうも。
東方のいつも通りの流れをちょっといじっただけの回になりました。
予想よりちょっと長くなりましたけど、まあ全体の構想の通りの出来ですね。
ここまでありがちな展開だが、一体どんなオチを迎えるのか!
霊夢は一体どうするのか!
俺にも分かりません(適当)
挿絵はいつか入れます。いやマジ。いつになるか分からないけど。

それではまたいつか。