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毅然とし、それとなく。

気まぐれでありつつ適当に書き記す。

【東方小説】東方刻奇跡 29話「親友」

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「そういえば」
 自己紹介の後、それぞれ――椅子に座ったり、粗茶を飲んだり――ゆるりと休息を取っていた。その最中、早苗がふと声を上げて、加奈を見た。
「どうして幻想入りした私のことを覚えていたの?外の世界ではもう忘れ去られているはずなのに」
 忘れられている。今更ながら、早苗はそのことを自分の口から理解させられた。ずっと考えないようにしていたことだった。しかしそんなことは、既にこの世界に来る以前に覚悟していたことだ。何を感じようが、本当に今更なことだった。
 忘れられるということは、切ない。あるいは、死ぬよりも遥かに。
 それでも……忘れられても、別に良かったかもしれないな。
 幼い日の記憶が脳裡に蘇ったのを振り払っていると、早苗の言葉を聞いた加奈は胸に掌を置いて、瞳を閉じながら言った。
「早苗ちゃんのことを忘れるなんて、そんな酷いこと出来ないよ。私達、ずっと一緒だったじゃない。助け合って、笑い合って、いなくなるまでずっと、ずっと。きっと早苗ちゃんへの想いが強かったから、忘れなかったんじゃないかな」
 それを聞いて早苗は、ああ、と安心した気持ちになった。この娘はあの時から何も変わってない。落ち着いていて、優しい。本当に私の親友の、加奈なんだ。そう思うとなんだか一層心が安らぐ。しかし――忘れていないとなると、だ。早苗は脳裡に過ぎった疑問を口にしてみた。
「他の人との会話に、違和感があったんじゃないですか?」
 言った瞬間に加奈は苦渋の表情になった。やはりそうなのだろう。
「早苗ちゃんがいなくなった次の日、私は早苗ちゃんのことを忘れなかった。忘れなかったからこそ、周りの人たちとの会話が噛み合わなくなったの。それは最初だけだったんだけど……早苗ちゃんがいない前提で話すのに慣れる自分が怖かったの」
 加奈には、幻想郷のことこそ話していないものの、『遠いところへ行く』ということだけは話していた。その時に説明したのが、早苗のことを忘れてしまうことだった。早苗の脳裡に当時の会話が過ぎった。


 ――加奈ちゃん、そういうことだから、もうお別れだね……。
 ――でも、忘れるなんてそんな……そうだよね、早苗ちゃん、すっごく特別だもんね。私が関わっちゃいけないことなんだよね。
 ――ごめんね……。
 ――ううん、大丈夫。しょうがないんだよね……しょうがない。
 ――加奈ちゃん?
 ――ううっ……嫌だよぉ……忘れたくないよぉ……
 ――泣かないで……忘れても、私達は親友だよ。
 ――うん……私、決めた。早苗ちゃんのこと、絶対に忘れない。
 ――で、でも。
 ――忘れないでいてみせる。必ず。
 ――そっか。覚えていてくれたら、私も……癒される。ありがとう、加奈ちゃん。でも、これだけは約束して。覚えていても、私の事は探さないで。
 ――うん、分かった。私の方こそ、親友でいてくれてありがとう。


 加奈は約束を守っていたのだろう。守っていたにも関わらず、こうして再会出来た。これも奇跡の一環かな、なんて。
「そんなに私のことを想っていてくれたなんて……ありがとう、加奈ちゃん」
 早苗は微笑んで、お礼を言った。それを見かねていた魔理沙が加奈と早苗に向かって声をかけた。
「なあ、早苗と加奈は、外の世界では何をし合っていたんだ?」
 早苗と加奈は顔を見合わせて、二人ともくすりと笑った。
「そうですね……お互い、助けられていた、というべきですか」
 そう言ってから、早苗は少し苦い顔を浮かべた。それを見かねた魔理沙は、
「……ふむ。あまり聞かないほうが良さそうだな」
 と気遣いをしてくれた。その魔理沙に向かってすみません、と軽く早苗は会釈した。
 少なくとも5年以上前の話だ。早苗が幻想郷に訪れる以前、何をしていたのか。
 ――……
 再び過ぎった微かな記憶を振り払った。思い出に耽っている場合ではない。
 そんな中、扉の開く音が聞こえた。その音に振り返ると、逆光により明瞭ではないが人間の姿であることが僅かに確認出来た。
「……お前は誰だ?」
 魔理沙が警戒しながらも声を発する。突如訪れたその人間は魔理沙の言葉を無視してゆっくりとこちらへ向かってくる。やがて姿が明瞭になってくると、その人間は言わずと知れた存在だった。

 楽園の素敵な巫女。

 紅白に、腋の部分を曝け出した服、頭には大きく赤いリボン。間違いない――この幻想郷において重要な存在、博麗霊夢だった。いや……その存在を霊夢と言うには、圧倒的な違和感があった。
 白黒の仮面を身につけている。
 早苗たちが知っている博麗霊夢は、仮面を付けたことなど一度も無かったはずだ。何かのお遊びだとでもいうのだろうか。
「なんだ霊夢か……随分と久しぶりな気がするな」
 警戒を解いた魔理沙は、明るく笑いながら霊夢の許へと歩み寄った。魔理沙は、霖之助と結婚してからというもののあまり霊夢には会っていない――もとい、博麗神社に行くことが少なくなっていたようだ。異変にも向かうことが無くなっていたし、魔理沙は変わろうとしたのだろう。
 羨望し――嫉妬する自分から。
「色々と話したいことがあるんだ……お前もショックを受けるかもしれないが……大事なことなんだ」
 仮面をつけた霊夢?は何も答えない。それを見かねた魔理沙は、悩んでる仕草を見せたあとに、何かを思いついた様子を見せた。
「なんだよ、魔理沙様がしばらく会いに行ってやらなかったから寂しかったのか?意外な所もあるもんだな」
 へらへらとした様子で魔理沙が言う。霊夢?は静かに右腕を動かし、
「――――ッッッッ!!!」
 それを魔理沙にぶつけた。
 魔理沙霊夢?側から見て左に大きく回転しながら吹き飛ばされ、逆さまの状態で木製の壁に激突した。物が辺りに散らかるが、幸いなことに魔理沙の上に落ちることはなかった。
魔理沙さん!!」
 霊夢?の仮面の目元の穴から赤い光が爛々としているのが見て取れた。
 早苗と加奈は身構える。霊夢?は吹き飛ばされた魔理沙を歯牙にも掛けず、ゆっくりと加奈に向かって歩み寄っていく。
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 目的は加奈ちゃん……!?
 それを確認した早苗は躊躇せずに霊夢を突き飛ばそうと全速力で駆けた。それを霊夢?は避けようともせずに、
 命中。
 そして霊夢?は掻き消えた。手応えは無かった。嫌な予感がして、早苗は加奈のいる方向へ振り向いた。
 霊夢?が加奈に触れようとしていた。この技は見覚えがあった。亜空穴。ワープをして奇襲攻撃をする技だ。
「あ……ああ……早苗ちゃん!助けて!何だか、嫌な感じがするよ……あの変な女の人みたいな……嫌な感じが――」
 霊夢?によって気絶させられた加奈は叫びきれずに仰向けに倒れた。そんな加奈を霊夢?は抱きかかえ、急激な速度で香霖堂から出て行った。
 まさか……これも、あれの仕業なのか……?
 早苗が硬直し加奈の言葉を反芻していると、視界の隅で魔理沙がゆっくりと立ち上がるのが見えた。魔理沙は外を睨みつけ、
「クソッ!何がどうなっているんだ!!早苗、追いかけるぞ!!」
 そう叫んだ。早苗は頷くと、魔理沙は霖太郎を見て頭を撫でた。
「……霖太郎、お母さん、ちょっと出かけてくる。良い子にして待ってるんだぞ」
 霖太郎は静かに頷いた。それを確認した早苗と魔理沙は再び頷きあい、外へと躍り出た。







To be continued…

あとがき
やっと続き書けたよ!!!凄く忙しくて全然書けなかったよ!!
ペース、上げられるといいなぁ……。

しばらく放置していたので近況報告

お久しぶりです。忙しくて小説全然更新できてないです。
何を隠そうテスト一日目が始まりました。今から対策しておかないとまずい気がしていたので、しばらく勉強づくし。

それと、今月末に開催されるニコ童祭に動画参加してみようかと思ってまして、ちまちま絵を描いてました。

この二つを両立していたので、小説のほうが疎かになってしまいましたw
でも、テスト終わったら続き書く予定ではありますよ。ネタも大分出来上がりましたし。

動画出来上がるかな(ボソ


それではまたいつか。

【東方小説】東方刻奇跡 28話「再会」

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(※この章はオリジナル要素が多少含まれていますがそこまで重要な立ち位置じゃないので気にしないでください)








「色々と、有難うございました」
 夜が明けて、真昼時になった。あの後白玉楼で休息を取った早苗は、また自らの目的の為に行動を起こそうとしていた。妖夢とともに白玉楼の入口へとやってきた後に、一言お礼をしたのだった。
「気にしないで。幽々子様も、せめて早苗を見送ってから行けばよかったのに……本当に、どんな用だったんだろうなあ……」
 そう妖夢がぽつりと呟くのを見て、早苗は何も言えずにただ俯くしかなかった。幽々子は突如西行妖の封印が解けて、原因不明のまま消滅してしまったのだ。恐らく妖夢は何も言わずとも自ずと気付くであろうが、先に言っておくべきか……いや、そんなことはしないほうがいい。ここは幽々子の気持ちを汲んでやろう。それよりも――この謎を解明しなければ。
 でも、なんだろう――とても近いところに答えはある気がする――。
「じゃあ、信仰集め、頑張ってね。私も、出来る限り協力するから」
 妖夢が笑顔でそう言ったのを軽く会釈して、早苗は白玉楼を後にした。……あっ。そうか。この長い階段下らなきゃいけないんだっけ……。溜め息を吐きながらゆっくりと階段を下り始めた。






            第六章 幼き日の記憶






「……ぷはああぁぁぁぁあああ~~~~っ!!」
 やっとのことで白玉楼の階段を下りきれた――空を飛べることを忘れているらしい――早苗は、結界を通り過ぎた後地上に降り立ってすぐに両手を膝に置いて少し前屈みの状態になって大きく深呼吸をした。正直休憩無しで行くとなるとあの階段は辛い。もう登りたくない。さすがに疲れた。少しだけ休憩してから先へ進もう。と座ろうとした瞬間、木陰に何か動くものが見えた。それを見た早苗は大きく眼を見開いて戦慄した。あれは――あれは!!
 早苗は急速な勢いで立ち上がり、その影を追いかけた。先程までの疲労など既に忘れ去っていた。あれは、私がこの世界に来る前の大切な、大切な――!



「さなえちゃん!あそぼうよ!」



「加奈ちゃんっ!!」
 早苗は大きく叫び、その先を行く影を呼び止めた。影は振り返ると、やはりその姿は幼き日からの親友、加奈だった。感極まって抱きつこうとしたが、加奈までの道のりによりそれは叶わなかった。いつの間に乗り越えたのか、加奈は崖を越えた先に居た。全力で走り抜けてきて唐突に急ブレーキをかけたので少しバランスが崩れてしまった。何とか持ち直して、加奈のいるその先を落ち着いて見た。加奈はこちらを振り向いて驚愕しているようだった。どうやら幻想郷に迷い込んでしまったのだろう。……何故?考えても仕方が無い。それならば実際に聞いたほうがまだ早い。早苗は再び大きく叫んだ。
「どうしてこんなところにいるの!?ここは、あなたが来るべき場所ではないのに!」
 そう問うが、加奈は混乱するように頭を振っていた。
「早苗ちゃん、久しぶり……説明したいところなんだけど、何がなんだが分からないの……変な女の人に連れ去られて……なんというか、その人から嫌な感じがしたの。無我夢中で逃げてきて、気がついたらここにいて……」
 変な女の人……?そんなのが当てはまるのは、紫ぐらいだが……何故加奈をここまで連れて来たのだ?人質か何かにでもする気だったのか……?だとしたら、奇跡的に逃げ切れたということか。
「そっか。無事なら良いの。兎に角、安全な場所へと移動しましょう」
 安全な場所、か……早苗は無意識に自分の言葉を脳内で反芻し、笑みが少し引き攣るのを感じた。こんな状況下だから魔理沙にお世話になるしかないが、魔理沙は立ち直れただろうか……。あれから香霖堂には訪れていない。ここ数日の間は、野宿で何とかやりくりしていたのだった。早苗は空を飛んで崖を飛び越えると、加奈の近くへと寄った。本当は、このまま抱きつきあって再会を喜び合うべきなのだろうが……最近の出来事があまりにも辛すぎて不思議とその気にならなかった。早苗は加奈に歩く道を指し示すと、進むのを促した。


 香霖堂へ入ると、今は亡き霖之助の椅子に座って魔理沙は霖太郎に絵本のようなものを読み聞かせているようだった。見ると、魔理沙はところどころ読み間違えたりつまづいている。読み聞かせなんてあまり経験したことがないのだろう、仕方が無い。早苗と加奈は入口の隅に隠れてそれを邪魔にしないように配慮した。


  あるところに、とってもすばらしいちからをもったインコさんがいました。

  インコさんはやさしいので、そのすばらしいちからをつかってこまっているひとたちをたすけていました。

  けれどあるひ、インコさんはそのちからをまちがったつかいかたでつかってしまったのです。

  なんにんものちからのないひとたちがいなくなっていきました。

  やがて、インコさんじしんすらも……… ………


「あれ、破れてるみたいだ……」
 話の途中で、魔理沙がそんな声をあげた。どうやら絵本が破れていて、続きが分からないようだ。魔理沙が困った声を上げている中、霖太郎が少し怖がりながら魔理沙に話しかけた。
「おかーさん、このおはなし、こわいはなしなの……?」
「そんなことはないぜ、インコさんはきっと皆を幸せにするはずさ」
 霖太郎のそんな声に苦笑しながら魔理沙は答えた。絵本の内容は終わりか、ならばそろそろ出てもいいだろう。早苗と加奈はゆっくりと物陰から身体を動かし、魔理沙に姿を現した。二人を見た魔理沙は顔を赤らめながら驚いた。
「い……いつからいたんだ?」
 眼を見開いて恥ずかしがりながら魔理沙が問いてきた。その様子に少しだけ吹き出しながらも、早苗は答えた。
「随分と女らしくなったんじゃないですか?子供の絵本だなんて」
「う、うううるさい!私だって女だ!こんなことだってするさ……それに、香霖も同じことをしていたからな……」
 片手で顔を隠しながら魔理沙は誤魔化すように半ばやけくそに叫んだ。この様子だと、霖之助がいなくなったことは大分克服できたらしい。それを知った早苗は胸を撫で下ろした。魔理沙は数秒の間恥ずかしがっていると、やがて加奈の存在に気がつき、それとともに首を傾げた。
「そいつは?」
「この子は私が外の世界にいた時に凄く仲が良かった子です。どうやら紫が何故かここに導いたみたいで……」
 早苗は少し後ろを向いて加奈を見ると、加奈は頷いて一歩前進して魔理沙に軽く会釈した。それを見た魔理沙は同じく会釈するが、傾げた首は元には戻らなかった。
「幻想入りしちまったのか……そりゃお気の毒、だな。私は魔理沙だ。まぁゆっくりしていくといいさ。幻想郷は全てを受け入れる。ここには外の世界にないものがたくさんあるぜ。……しかし、紫がか。気まぐれにしちゃあ偶然すぎるよな。あいつは早苗の命を狙ってきてる。人質か何かにでもするつもりだったんじゃないか?」
 その言葉に早苗は頷いた。
「何とか逃げ切れたみたいですけど、またいつ捕らえに来るか……」
「それもそうだな……しばらくは家にいるといいぜ。人が増えると霖太郎も喜ぶはずだ」
 魔理沙は笑顔になってそう言った。




 場所は変わって、博麗神社。
 霊夢は縁側でお茶を啜っていたが、その表情は曇っていた。霊夢は、これまでの異変に全て勘付いていた。その度に動こうとしたのだが、紫に止められてどうすることも出来なかったのだ。それ故に気分は晴れぬまま日々を過ごしていたのだった。
「全く、異変に行くなってどういうことなのよ紫の奴……。私の勘はもう何度も反応してるっていうのに……」
 ぼそりとそんなことを呟くと、視界の隅にスキマが現れるのが見てとれた。言わずとも紫であろう。監視にでも来たのだろうか。
「紫、いい加減にしてよね。もうむず痒くて仕方ないわ」
「……」
 紫は霊夢の問いには答えず、俯いたままだった。それに霊夢は首を傾げると、紫は静かに口を開いた。
「――霊夢。真実を教えてあげる。あなたの、過去の真実を――」






To be continued…

【東方小説】東方刻奇跡 27話「西行妖」

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***-幽々子-****

 一瞬だけの痛み。それとともに、重要なことが私の脳内に流れ込んだ。西行妖に封印されているのは、生前の私自身の身体。私は自分自身を復活させようとしていたのか。通りでどれだけ頑張ろうとも封印が解けないはずだ……。そしてもう一つ、私は危険な事に気付かされた。


 西行妖の封印が解けた。私は、もうすぐ消えてしまう。


 しかし、何故?封印はどうしようと解けないはずだ。誰かが西行妖を満開にすること以外の封印の解き方を見つけたのだろうか?紫……ではない、と信じたいけれど。いや……考えていても仕方が無い。
 これが運命ならば、あるがまま受け入れよう。妖夢には……内緒にしておきたい、その為には……。





 数日前。私は紫を白玉楼へと誘った。部屋は同じく和室で、向かい合うように座っていた。
「紫……あなた。最近、何かしているんじゃない?」
 私は静かに、だがどこか強い声で告げた。その声に紫は反応することもなく、ただ一言告げた。
「気付くのが遅かったんじゃない?私は何年も前から調べていたけれど」
 真顔で淡々と台詞を吐き続ける紫に少し引きながらも更に問う。
「何年も前から?一体――」
東風谷早苗を殺すのよ」
 しかし、その言葉は力強い言葉により遮られてしまった。唐突に不穏な言葉を聞かされた私は戸惑い、思わず聞き返してしまった。
「殺すって……呆れた。そこまでする必要がどこにあるのかしら」
「……あなたには関係ないのよ。話はこれで終わりにしましょう」
 それだけ言うと紫はスキマを開いてどこかへと立ち去ってしまった。




***-妖夢-****

 一時間後。私は突然幽々子様に中庭に呼び出された。
「何ですか?唐突に」
 中庭へ行くと、幽々子様はこちらに背を向けて西行妖を見ていた。片手には刀が握られている。もしや剣術の稽古でもするのだろうか?それはそれでいいのだが……何で今?
 声をかけた私に気がついた幽々子様はこちらを向いて微笑んだ。
妖夢、私ね。突然だけどしばらく白玉楼を留守にすることになったの。だから、出かける前に稽古を、ね?」
 私はそれを聞いて大きく驚愕した。留守にする!?そんなことして、色んな管理はどうするというのだ!?まさか、私に任せるってこと……?そんなあ!というか、どこへ行くんだ?何をしに?
 様々な疑問が頭を駆け巡り混乱しかける。
「色々な話は後にして、さあ、始めましょう」
 そう幽々子様に言われてはっとなり、白楼剣と楼観剣を構えた。もちろん、本当に斬る訳ではなく、寸止めだ。
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 手始めに、深く腰を落としてから素早く間合いを詰めた。そしてから背後に回りこみ、二連撃切り裂き――と行きたいところだが出来ないので体当たりで大きく突き飛ばした。もちろん、これだけで終わるはずがない――はずだった。吹き飛ばされて草に叩きつけられた幽々子様は少しだけ哀しい表情をした後ゆっくりと立ち上がると、たはは、と笑いながら両手を上げた。
「まいったわ。やっぱり妖夢は強いわね~」
 ……え?もう、終わり……?始まったばかりじゃないか。私が呆れ立ち尽くしていると幽々子様は私の気持ちを察したのか理由を告げてくれた。
「もう時間が来ちゃったみたいなの。ごめんね。もう……行かなくちゃ……」
 幽々子様の表情が曇った。幽々子様のこんな顔、初めて見るかもしれない……。……それなら。
「……そんな顔しないで下さい、幽々子様。幽々子様が留守の間中ずっと、この白玉楼を守る事を誓います。いつ戻ってきても安心出来るように、いつまでも、永遠に……」
 それなら、庭師として、幽々子様に慕う者として、最大限の。精一杯の出来る事をやろう。それを聞いた幽々子様は、瞳に涙を浮かべなから微笑んだ。
「ありがとう、妖夢……」
 幽々子様は、ゆっくりと歩いて、私の横を通りすぎて、白玉楼の入口から出て行った。
 ………………。これからは、私が全部担うんだ。どれだけ忙しくなるかは分からないけれど、主人が安心して帰って来られる場所をいつまでも保ち続けよう。そう覚悟を決めると、西行妖が大きく輝いた。その方向を見ると、私は大きく眼を見開くことになった。
「西行妖が……満開になった……!!」
 何と美しいものか……!これは幽々子様に報告しなければ!私は白玉楼の入口へと駆け、辿り着いたがその先にはもう誰もいなかった。余程急いでいたのだろうか……もったいない……。やれやれと私は白玉楼の中へ戻っていったが、そこで違和感に気付いた。
「そういえば……幽々子様は、どこへ行ったんだろう?」
 私が真実を知るまではそう時間はかからなかった。



*******

 幽々子が白玉楼から出てきた。恐らく妖夢との会話を終えてきたのだろう。
「ごめんなさいね、わざわざ外にまで出てもらってて……」
「別に構いませんよ……それより、よかったんですか?」
 早苗が問いかけると幽々子が切ない表情で静かに頷いた。それを見た早苗はそれ以上何も言わなかった。……しかし、何故幽々子は突然消える事になってしまったのだろうか?自然的な現象で封印が解けたのか、それとも第三者が……いや、別の封印の解き方があるとは考えにくい……。まさか、八雲紫……?いや、何でもかんでも紫に結びつけるのはやめよう。今回は私は無関係だし、第一幽々子と紫は友人同士だ。と、早苗が深い思考の海に潜っていると幽々子が声をかけてきた。
「早苗、このことだけれど、何となく、正体は私達が知ってる存在な気がするの……。悪いけれど、私の代わりに調べてね……」
 私達が知ってる存在、か……。だとすると範囲は広いな……。早苗は再び幽々子の言葉に頷いた。
「……それじゃあ、後はよろしくね、早苗……」
 早苗に向かって幽々子が微笑んだ。すると、辺りが桜色に輝きだす。そのあまりの眩しさに眼を瞑った。次眼を開いた時には、そこに幽々子の姿は無かった。
 今度は白玉楼が輝きだした。西行妖が咲いたのだろう。見てみたい気持ちもあるが……。今は、何となく戻る気にならなかった。もう少し、ここで立ち尽くしていたい。




 桜、光り、消えて行く。大切な者残して。




To be continued…

キングダムハーツ2 FINALMIX レベル1縛りプレイレポート

どうも。くわないです。
Twitterを見ていた方は分かると思いますが、俺は一ヶ月以上前からキングダムハーツ2ファイナルミックスのレベル1その他色々縛りプレイをしていました。
具体的な縛り内容
・レベル1
・ドーピング無し(APアップ除く)
・グロウアビリティ縛り(ハイジャンプ、エアスライド、ドッジロール、エアドッジ、グライド縛り)
こんな感じの縛りで挑戦しまして、一ヶ月少し。そしてとうとう!悪戦苦闘の末に!
本日の午後2時50分頃にクリアしましたー!!
Foo↑やったぜ。
いや~もうテンション上がりました!
ゼムナスくそ強かった・・・今までのがチュートリアルなんじゃないかってぐらいでしたね。でも慣れるとそうでもないかも?(慢心)
リザルト画面になります。
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課題。
・連携に頼りすぎ(マニー稼ぎの際は仕方ないけどせめてイベント戦の時とかぐらいは)
・ミッキーに頼りすぎ(主に序盤)

次回やる時はこの二つは縛っていきたいなぁと。でもその前にこのデータで隠しボスを・・・出来るのか(深刻)
今のところやる予定は無いですが…暇になったらやりたいかな。

えーと。ここからはKHとは無関係なこと。
東方のことです。
現在連載中の東方刻奇跡なんですが……まあ、察しが良い方は分かると思うのですが更新が多少遅れます。
理由としては、やりたいことが多いのと、次章のネタがまだまとまってないのと、リアルで忙しいからです。色々忙しいです。
でも次回は明日か明後日にでも更新しようかと思っています。
それでは。

【東方小説】東方刻奇跡 26話「妖怪桜」

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【2014年4月2日、東方刻奇跡のタイトルロゴ作成してみました。上記のリンクからどうぞ↑】







 早苗が告げた言葉を聞き取った幽々子から徐々に笑みが消えていくのが見てとれた。それを見た早苗は、自分自身の行動を後悔した。浅はかだったかもしれない――。幽々子は、笑みが消えるとともに寂しそうな瞳をしながらゆっくりと溜め息を吐いた。早苗は戦うことを覚悟し、ゆっくりと戦闘体勢を取った。
 思えば自分のこれまでの行動は馬鹿丸出しだ。噂に聞けば幽々子は紫の親友だそうじゃないか。だったら紫は仲間を増やしたり――あるいは相談か何かをしているかもしれない。本来ならば、わざわざ賭けに踏むことも無く避けるのが一番だ。何故なら――幽々子の「死を操る能力」は極度の危険性が考えられるからだ。その能力の詳細を聞かずとも分かる……もし幽々子が紫とコンタクトを取っていたら早苗は今ここで殺されてしまうことぐらい。
 先ほどまでの妖夢の様子から察するに、妖夢には何も知らされていないことは把握できる。そこは優しさなのだろうか。それともいつか妖夢を使って早苗を警戒させずに白玉楼へ来させるつもりだったのか――後者だったならば、今が実際そうだ。
 どうして今までこうした思考が回らなかったのか。フランドールのことで思考を妨害されてしまった。とにかく、幽々子が少しでも怪しい素振りを見せたらすぐに後退しよう。そう早苗は心がけるが、幽々子は早苗の思惑とは裏腹の行動を取った。
「ごめんなさい……紫のことは、何も知らないの。いえ、具体的には知っているのだけれど……立ち話も何だわ、中へ入りましょう」
 その言葉を聞いた早苗はゆっくりと体勢を元に戻し、そしてまた内心安堵した。良かった――と言いたいが、まだ杞憂であったとは言い切れない。油断させて殺すつもりなのかもしれない。ここで離脱するのが最適か――?しかし、もし幽々子に敵意は無いとしたら、こちらに紫の有力な情報をくれるかもしれない。
 例えば、ここで抜けたとして、それからはどうする?また紫が襲ってくるだろう。何も出来ずに殺されてしまうかもしれない。それだけはいやだ。また賭けをしてみるか……。
「では、お邪魔します」
 早苗は微笑みながらそう言って、幽々子妖夢とともに白玉楼の中へと入っていった。


 十畳ほどの広さで、真ん中には木製の四角いテーブルが置いてある和室へとやってきた。どうやら普段はここで飲み食いしているようだ。早苗は妖夢に着席を促されて静かに座った。一方幽々子はというと早苗とは逆の位置に座り、向かい合っている状態が出来上がった。
「では、私は何か飲み物を持ってきますから、どうぞ先に話していてください」
「いえ、妖夢も一緒に話を聞いて頂戴。お茶は後でいいから」
 それを聞いた妖夢は口答えしようとしたが、幽々子は珍しく真面目な様子だったので渋々幽々子側のテーブルの縁に座った。それを確認した幽々子は、早苗の方を向いてゆっくりと話し始めた。
「私、最初にあなたのことを見た時にしばらく喋らなかったでしょう?あれは別にあなたのことを忘れていた訳じゃなくて、紫からの話題に出ていたから戸惑ったのよ」
 紫からの話題、と聞いて早苗は少しだけ驚愕した。
「やはり八雲紫はあなたのところへ来ていたのですね?」
 幽々子はゆっくりと頷いた。
「というより、私が呼んだのだけれどね。何だか最近様子が変だから白玉楼まで呼んで話を聞こうとしたんだけど全然教えてくれなくて……。ただ『東風谷早苗を殺す』としか言っていなかったし……」
 早苗は、三度安堵した。これで本当に安心出来る。しかし、紫は仲間すら集めずに何故早苗を殺そうとするのか……謎は深まるばかりだ。
「力になれなくてごめんなさい……良かったら、今日は白玉楼に泊まっていきなさいな。疲れてるでしょうし」
「あっ……ありがとうございます!それなら、ちょっと外に出てみてもいいですか?冥界の空気を吸ってみたいんです」
「全然いいわよ~。滅多に来られないでしょうしね」
 その幽々子の言葉を聞きながら早苗は襖を開いて縁側へと出て、大きく息を吸った。ほう……ふむ……なるほど……うん、違いが分からない。似たようなものなのだろうか?
 そんなことを考えながら深呼吸していると、何やら大きな桜の木が見えた。そういえばここに入る時にも見かけたがあれはなんだろうか。すると、そんな早苗の気持ちを察したのか隣まで幽々子が歩いて来て、一言言った。
「あれは西行妖。妖怪桜よ。あなたも話くらいなら聞いたことがあるんじゃないかしら?」
 そういえば……確かにそうだ。幽々子はこれを咲かせる為に春雪異変を起こしたのだと聞いたことがある。
「それから西行妖、満開にはなったのですか?」
 早苗が言うが、幽々子は困ったような顔をしながらかぶりを振った。
「春雪異変程の行動を起こさなきゃこれは満開にはならないわ……全くもう、いつになったら見られるのかしら」
 西行妖の美しさとその下に封印されている物。それは何なのだろうか。どちらも幽々子は見たことがないのだ――もちろん早苗も。
「良かったら近くに行って見て来てもいいのよ?減るものでもないし」
 幽々子にそう促され、早苗は頷いた。


 遠目に見ても――例えそれが枯れ果てていたとしても――凄まじい雰囲気を感じ取れたのだが、実物を近くで見るとやはりそれは倍になってくる。早苗は西行妖の目の前に立っていた。春雪異変の時は咲きかけの状態だったという。これぐらいの桜の木だと、咲きかけだったとしてもさぞかし美しいのだろう。見ることが出来なかったのが非常に悔やまれる。
 早苗は西行妖の横の部分にゆっくりと手を触れた。
 手触りは普通の木と変わらないがとても大きい。一体どれくらいの年月が経っているのだろうか――早苗はそのまま西行妖を手で撫でながらそう思った。そしてこの真下に何かが封印されている。そう考えるとなんだか不思議な気分になってくる。
 どうしたら咲かせることが出来るのだろうか――――


 幽々子は、さっきまで早苗と話していた部屋で静かにお茶を飲んでいた。しばらくぼうっとしていたが、やがて身体の様子がおかしいことに気がつく。
「ッ――――」
 少しだけの痛み。それだけのように思えた。けれど幽々子は大切なことを理解した。
「そう……そうだったのね」







To be continued…

【東方小説】東方刻奇跡 25話「亡霊の姫君」

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 妖夢の元へ飛んで戻ると、妖夢は剣の柄の部分を支えにしながら前のめりになっていた。周りに妖怪はいない。恐らく紫が離脱したとともに妖怪達も戦うのをやめてどこかへ行ってしまったのだろう。
妖夢さん!大丈夫ですか?!」
 早苗は急いで駆け寄り、額に汗を浮かべて息の切れている妖夢に声をかけた。その声に反応した妖夢は俯いている顔を少し横に傾け、早苗の方を見た。すると、安心したように大きく息を吐いた。
「無事でよかったです。……急いで白玉楼へ向かいましょう。肩を持ちましょうか?」
 一難去ったとはいえ、油断は出来ない。悠長にしていればまた襲われる可能性がある。空を見ると、陽はもう完全に落ちていた。夜は危険だ。急いだほうがいい。早苗の言葉にかぶりを振った妖夢はゆっくりと体勢を持ち直し、剣を背中に仕舞った。どうやら平気なようだ。
「大丈夫よ。急ぎましょう。……幽々子様に聞かなきゃ、紫様のこと……」
 早苗はそれに頷き、二人はゆっくりと空を飛んで白玉楼へと向かった。






 空中にある結界を乗り越えて、冥界へとやってきた。その瞬間、早苗はその階段の長さに素頓狂な声を上げることになったのは、言うまでもない。
「ああ、そういえば冥界にやってくるのは初めてだったわね。幽々子様と私が異変を起こしたのは早苗が来る前だものね……」
 その言葉を聞いた早苗は、噂程度に聞いていた異変のことを思い出した――春雪異変だ。
「それなら聞いたことがあります……けれど……こんなに長い階段があるなんて聞いていませんでした……」
霊夢魔理沙はこの階段を上って幽々子様を倒しちゃったんだから。私はこの階段の途中で待ち構えて、二人と戦ったの――まあ、負けちゃったんだけどね」
 妖夢が少し困ったように微笑みながら言う言葉を、早苗は気の抜けた声でしか反応出来なかった。
 相変わらず幻想郷(この世界)は凄い。今更なのだが、これまでここで見てきた異変も、日常も、外の世界では全く見られないものだ。平凡じゃないものが、ここにある。何でもアリなんだ。
「ここで長話する訳にも行かないし、そろそろ行きましょう」
 その妖夢の言葉に、早苗は少しだけ顔をしかめた。……この階段を上るのか……。それを察したのか少し噴き出した妖夢は一言付け加えた。
「飛んでいけば階段に苦労することもないじゃないの。ほら、早く」
 早苗はそれを聞いてはっとなった。確かにそうだ。目の前の事に囚われすぎていた。妖夢に急かされた早苗はゆっくりと羽ばたき、二人は飛んで階段を一気に乗り越えた。
 白玉楼の入口に着くのにはそう時間はかからなかった。二人はゆっくりと着地し、入口の門を通り抜けようとした、その時。
妖夢ぅ~」
 どこからともかくだらしなく妖夢を呼ぶ声が聞こえた。思わず早苗は身構えたが、妖夢は手馴れた様子で呆れていた。すると、門からふわふわとゆっくり浮いて移動してくる人物がやってきた。
「もぉ~何を遊び呆けていたの?私もうお腹ペコペコなのに~」
 両手でお腹をさすりながらやってきたそれは――これまでにも宴会等々で出会ったことのある亡霊の西行寺幽々子だった。幽々子は今にも死にそう――いや、既に死んでるのだが――な顔をしていたが、妖夢の持っている荷物を見るとみるみる顔を明るくさせていった。
「わぁぁあ!美味しそう!早く作って!作って妖夢ぅ!」
 妖夢に近寄っては周囲で騒々しくする幽々子に溜め息を吐きながら、妖夢は早苗の方を振り返った。
「ごめんなさい、食事にはうるさい人だから……」
 それは一緒に宴会をしている仲だったから分かるのだが、まさかここまでとは。最初に身構えてしまった自分が恥ずかしい。
 幽々子はしばらく妖夢の周囲で騒々しくしていたが、やがてようやく早苗の存在に気付くとその動きを止めた。真顔のまま見つめてくるので、思わず早苗は息を呑んだ。もしや、悪い予感が的中してしまったか――?緊迫した時間が続いた。長いようで短かった気がするような時間の後、幽々子の表情がぱああ、と明るくなっていくのが見て取れた。
「ああ!あの守矢神社の子ね!ごめんなさいね~ちょっと前に見た時は幼かったから分からなくて。その様子だと封印は解けたのね。確か名前は、早苗だったかしら?」
 その幽々子の言葉に早苗は頷きながら内心安堵した。良かった。どうやら今回のことで紫とはコンタクトを取っていないらしい。
「買出しの途中に偶然出会ったんですよ。それで、幽々子様に聞きたいことがあるから、っていうから連れて来たんです」
「私に?一体何を聞きたいの?」
 きょとんとする幽々子を見た後に、隣に立つ妖夢を見た。妖夢が頷くのを見てから、早苗はゆっくりと口を開いた。
八雲紫について、何か知りませんか?」
 ――その瞬間、幽々子の顔から笑みが消えた。







To be continued…